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競技を「わかっている」デザイン


——それも「そぎ落とし」の一種かもしれませんね。

一方でいったん完成したデザインは各競技団体の方にリアルな動きや角度などのアドバイスをもらって何度も調整を重ねました。例えば基本的にどのピクトグラムも抽象性を高くするために、手足の先は円弧にしているのですが、それでは表せない競技性、肉体や動きの美しさも出てきて。空手や柔道など、結果的につま先や手の先を加えた競技もあります。

より競技性が伝わるように空手のピクトグラムはつま先や手の先の表現を加えた。Photo by Tokyo 2020/Shugo TAKEMI


背負い投げの鮮やかなシーンをモチーフにした柔道のピクトグラム。


——そのほうが競技的により美しい形、ということですね。

驚いたのが馬術で、ピクトグラムの馬の顔面と脚が垂直になっていますが、この形が高い評価点になるそうなんです。馬の顔面は本当は垂直ではないほうが馬らしく見えるのですが、それだと評価点が低い形のピクトグラムになってしまう。

競技団体からのアドバイスで馬の顔面と脚を垂直に手直しした馬術のピクトグラム。


——なるほど。その意味では関係者が見ても、競技を正しく表現している、「わかっている」ピクトグラムになっているんですね。

そう。だから、今回のピクトグラムは、なるべく大きく使ってもらえるとうれしい。競技ひとつひとつの動きの細部までこだわって、0.1mm単位で線を加えるかどうか考えましたから。大きく使っても粗が出ないように作っていますし、大きいほうが各競技の動きがよくわかると思いますよ。

——では最後に、スポーツにおいてデザインが果たせる役割について、考えを教えていただけますか?

現代においてデザインというジャンルの領域はどんどん広がっています。「経営デザイン」なんて言葉もありますよね。デザインって何と「接着」してもいいんです。デザインの力によって対象物のことが理解できる、より素直に入り込める、より心地良く楽しめる、より機能的になる、あるいは未来を感じることもできるかもしれない。それはスポーツも同じだと思います。

ピクトグラムなら機能的に言語がなくてもスポーツ、競技を伝えることができ、どういうものか知るきっかけになる。人の動きって面白いね、と改めて感じてもらえたらうれしいですね。

 

田澤健一郎=取材・文

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