世界最高峰! 日本デニムの今●「デニムと言えばアメリカ」。かつてのヴィンテージブームを経験した人たちはそんな先入観を持ちがち。しかし今、世界を見てみると、プロはこう口を揃える。「デニムと言えば日本」。なんで? 方々から探る、世界最高峰、日本デニムの今。
フランスのデニムメーカーでキャリアをスタートし、数多のアメリカンデニムに触れてきた“デニムオタク”の小林 学さん。今は日本のファクトリーとともにオリジナルのデニム生地を作っている。
そんな業界屈指のデニムマニアですら日本デニムのポテンシャルには舌をまいているワケだが、その理由を深堀りしてみると、背景には先達たちのたゆまぬ努力と果てなきドリームにあった!
「日本のデニムが世界一」は本当か!?
服好きから圧倒的な支持を集める「スロウガン」と「オーベルジュ」のデザイナー、小林 学さん。
「まず、何を持ってそのデニムを良しとするかですよね。確かに、日本のデニムは世界から見ても素晴らしいとされていますが、目指すところによって基準は変わってきます。最高級の素材をかき集めたとしても、いいデニムができるとは限りません。なにせ、もともと高級なものじゃないわけですから」。
たしかに日本デニムは、アメリカから届いたワークウェアに衝撃を受け、そのクオリティを目指して作られ始めたという経緯がある。しかし、オリジンこそ正義かと問われると、それもまたどこにプライオリティを置くかで変わってくるのだという。
「リーバイスの501の製法は、速さを競う自動車レースと同じなんですよ。ブレーキを踏まず、アクセルをブワーッと踏み続ける。それで一日に何本縫えるかっていうのを研ぎ澄ませてきた、いわば作業効率化の歴史。ただ、そこには崇高な想いもあるわけです」。
一体どういうわけか、小林さんは続ける。
「国内ではレプリカジーンズが売れに売れた’90年代、とある商社の方に『リーバイスでも、多少値段は張ってもヴィンテージがコンセプトのモデルを作ればいいのにね』と話したことがあったんです。そしたら、『これはアメリカの国民服だから、39ドルであることに価値があるんです』とおっしゃっていました。
390ドルだったら富裕層しか手が出せませんからね。39ドルという価格には、『私たちは決して差別しない』というメッセージも含まれているんですよ」。
だからこそ、アメリカのデニムメーカーは基本的に、コスト面を考慮して自国の綿を採用する傾向があるという。
「わざわざ送料をかけてまで、ギリシャやインド、エジプトから取り寄せたりしないんです。だから、我々が使っているスビンコットンやシーアイランドコットンを使うわけがないんですよ。
アメリカの綿は主にピマ種で、そこまで長くない中超綿。ハリ・コシ・光沢という綿を判断する3つポイントがあるとしたら米綿はコシが強く丈夫という認識でいいでしょう。仕上がりの美しさを目指すなら超長綿の強いインド産を使いますけど、とはいえ米綿が悪いかいうとそうではない。要は、何を目指すかなんです」。
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