当記事は「FLUX」の提供記事です。元記事はこちら。 かつてのネイティブ・ハワイアンの主食であったパンノキ(ハワイ語でウル)は地元で採れて栄養価も高いパンノキはサステイナブルな食材としても注目の食材。
ウルを使用したスイーツ「ウル・アンド・カロ・ベーカリー」のオーナーが紹介するハワイ屈指のサステナブルな作物の可能性とは。レシピ付きで紹介。
「ハワイの食の主権は、美味しいケーキやザクザク食感のクッキー、リッチなチョコレートブラウニーと何の関係があるのか?」と問われたら、マイリー・カミスギさんは「たくさんある」と答えるだろう。
彼女は、「ウル・アンド・カロ・ベーカリー」の創業者として、日常の食事で伝統食物を使うことを提唱し、最近ハワイで勢力を拡大しているコミュニティのメンバーだ。
ここ数年、カヌープランツと呼ばれる海の向こうから古代ポリネシア人がハワイに持ち込んだ植物を使った料理が注目を集めている。ハワイの人々が輸入食品に頼りすぎていることへのカウンターカルチャーのムーブメントである。
より持続可能な食品はないかを探す過程で、地元の農家やシェフらがウル(パンノキ)やカロ(タロイモ)などの伝統植物に目を向けるようになり、自給自足の食料経済に軸足を移すことを試みている。カミスギさんのように、このムーブメントをビジネスに結び付けた起業家もいる。
ハワイで生まれ育ったカミスギさんだが、カヌープランツを料理に使ってみたことは一度もなかった。
ポートランド大学を卒業後、ハワイ大学カピオラニ・コミュニティカレッジの料理プログラムを履修するためハワイに戻ってきたときに、友達が食べてみてと甘くて熟れたウルをくれた。
カミスギさんは、すぐにウルの使い勝手の良さに気付き、今の時代の焼き菓子に使ってみることにした。ウルは乾燥させて製粉すればグルテンフリーの粉になったし、追熟させれば自然の甘味料としてレシピに加えることができる。
身体に優しいベイキングを目指しているカミスギさんは、グルテン、精白糖、卵や乳製品などの動物性食品を控えるなど、用いる材料を厳選する。
そんな彼女にとって、ウルやカロは、大切な文化的主要産物として、また栄養がふんだんに含まれた自然な生鮮食品として、注目すべき理想的な食材だった。
「ハワイの文化においても重要な部分ですしね。そのまま提供することもできるし、大地から収穫するものは何でも身体に良いですから」とカミスギさんは言う。
カミスギさんは、2018年に自宅のキッチンで店を始めた。
今では、地元で育ったパンノキが入った変わり種のバナナブレッド、ウル・マイア・ブレッドが有名だ。調達から供給までワンストップでは行かないために困難もあるが、カミスギさんは主な材料をハワイ由来にすることにこだわっている。
彼女が使うパンノキの実の多くは、一般の住宅の裏庭にあるパンノキから調達したもので、自ら収穫して製粉する。いわゆる「生産者から食卓まで」の実践だ。
これは、カミスギさんが創立メンバーであり、食の主権を重視している地元企業の共同体「
カヌープラントコレクティブ」が大切にしている精神でもある。
カミスギさんの最終的な目標は、焼き菓子が厨房を超えて永続的な影響を持つこと。つまり、サステナブルな方法で育てられた作物が持つ可能性を広く見てもらうことだ。
彼女が初めて甘いウルを食べたときにあっという間にカヌープラントの虜になったように、ウルやカロで作られた焼き菓子が、健康に気を配り、自宅でお菓子作りを楽しむハワイの人々にも影響を与えることを望んでいる。
ここでカミスギさんがウルを使って料理をする際のコツと自宅で楽しめるレシピをご紹介。
ウルを準備するウルは、コクアマーケット、ダウントゥアース、タマシロマーケットなど、地域に根ざした食料品店で入手可能だ。その場で入手できないかもしれないが、ファーマーズマーケットの露店でも取り扱っている場合もある。裏庭にウルの樹があるご近所さんと友達になって、焼き菓子をシェアするのも良いだろう。
熟れ具合を確認する
ウルの実で何を作れるかは、熟れ具合による。店から購入する場合は、いつ収穫されたものかたずねてみよう。熟していないものは鮮やかな緑色で樹液がなく、アーティチョークのように料理に使うか、ピクルスを作るのに向いている。
熟したものは樹液が多く、実の周りを覆っていて、ジャガイモのように下ごしらえができる。熟したウルは、触れると柔らかく、甘いデザートに適している。
ウルには品種がある
可能であれば、栽培者か供給者にウルの品種を問い合わせてみよう。タヒチとハワイの品種は、クリーミーでお菓子作りに向いている。
取り扱いのコツ
樹液の扱いに手こずるかもしれない。調理や下ごしらえをする際に、クッキングオイルをスプレーでかけて樹液がべたつかないようにすること。樹液が付いてしまったら、オイルでこすって拭き取る。
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