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【理由③】
魂を感じるタップは、歳を取るほど深みにはまる


熊谷さんのインタビューでも語られていたが、本場ニューヨークの街角では、年老いた黒人男性がふらっとステップを踏んで踊り出すシーンがあるという。映画などでも、初老の男性が軽やかにステップを踏む格好良い姿が描かれることは多い。

熊谷さん

「『足を踏む』って、誰もが本能的に持っている感情表現だと思います。大地を踏んで自分のあらゆる感情を深い部分で感じることは、人間の根源的でスピリチュアルな部分に触れることができる素晴らしい表現方法ですよね。

子供たちはそれを自然に純粋に感じられるし、大人になれば、どーんっと力強く足を床に踏みつける行為によって、自分のエネルギーを解放して、自分が自然の中で生きている感覚を再認識できる。

僕がタップを教える上で大切にしていることは、ステップをただ学ぶことではなく、タップを学ぶことを通して自分自身に向き合い精神的に成長することです。だから上手い下手に関係なく、一生かけてやり続けることができるんです。そしてより深く学んでいくうえでは、タップの歴史や文化を学んでいくことで、タップダンサー達が残してくれたリズムの財産を感じ、生き方としてタップダンスと共に生きていくことができます。それは世界中のタップダンサーと繋がることでもあります。

30代後半から始める人たちも楽しみながら学ぶことで、身体的にも精神的にもより成長していくことを感じることができるはずです」(熊谷さん)。

レッスン風景

タップダンスは、奴隷貿易や人種差別が横行していた時代のアメリカで隆盛した歴史を持つ。そして根源的には、アフリカ大陸に古くからあった民族音楽をルーツにしているともいわれる。そうした歴史から、タップダンサーは表層的な「型」を見せるのではなく、人間の根源的な願いや意志といった「魂」を絞り出す表現に結びついている。そうしたタップダンスの“奥深さ”は、37.5歳を過ぎた男性こそが惹きつけられる魅力である。

いい大人になると、流行りものや見た目の格好良さだけはなく、歴史や表現の奥底にある想いに触れることも含めて「嗜みたい」という志向になってくる。

その点、タップダンスは最適だ。誰でも簡単に始められ、自由な表現を楽しむ。それだけではなく、そのルーツを知ったり自分自身の内面と向き合ったりしながら、一生モノの趣味にしていくことができるのだ。37.5歳からこそ始めるべきタップダンス、ぜひチャレンジしてほしい。

 

【取材協力】
KAZ TAP STUDIO(カズ タップ スタジオ)
住所:東京都目黒区上目黒1-5-10 中目黒マンションB1−10
電話:03-6906-6076
http://kaztapstudio.com/

【熊谷和徳さん出演情報】
日野皓正スーパーライブ2019
開催日:8月7日(水)
会場:Bunkamura オーチャードホール
www.min-on.or.jp/play/detail_172129_.html

 

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島崎昭光=取材・文 小島マサヒロ=写真

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