料理の世界では、いかに素材の味を活かすかがポイントとよく聞く。味付けは最小限だ。服装もそうじゃないかと思う。
格好いい男の究極は、やっぱりブルーデニムと白Tシャツ姿。これを、シンプルな“味付け”によって、素材の味を活かしつつおいしく仕上げたいところだ。言うなれば“シンプルアップ”。
ここに紹介するものはすべて、普段どおりの気取らない佇まいながらも、きっちりとその役割を完遂してくれる。
「ギンザタナカ」のジュエリー
首元チラリのゴールドジュエリーは、枯れかけた40歳オーバーに花を咲かせる名脇役。ギラついていた若い頃より格段に似合っているはず。
実際に鳴らせるというホイッスルのチャームは、災害や事故などの際に役立つという実用的な側面も面白い。また、転じてお守りの意味を持つラッキーチャームとしても知られ、遊び心も滲ませる“万能派”でもあるのだ。
「エルメス」のハンカチ
ピスポケットは、ジャケットにおける胸ポケット同様の華やぎを添えられるベストポジション。ここに、いつものバンダナではなく、エルメスのコットンチーフはいかが。
シルクスカーフも手掛けるデザイナー、ディミトリー・リバルチェンコのポップな意匠が冴える1枚は、アメコミ風フォントで入った「SUPER H!」のレタードを覗かせれば、装いに遊び心が生まれる。手縫いされた縁のロールから醸される無類の上品さ。存分なシンプルアップが可能だろう。
「メゾン マルジェラ」の靴
もしもこの「タビ」を知らなければ、その良さをセンスのいい奥さまやパートナーに聞いてみるといい。日本の伝統的な足袋に着想を得た、メゾン マルジェラらしい独創的デザインは1989年に発表されて人気博し、今は流行に流されない傑作と言われる。
その男性版がリリースされたのが2017年のこと。デニムにさらっと合わせるだけで素敵になれると、大人気となったのだ。ゆえに、大プッシュなのだが1つ難点。相談した婦女子に「私の『タビ』も♡」とおねだりされてしまうことかな。
清水健吾=写真 柴山陽平=スタイリング 髙村将司=文