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執筆業の原点は、合コン


会社で好きなことができないのであれば、どうすればいいのか。大橋さんは当時、徐々に流行り始めていたブログサービスに目をつけた。

「理系だったのでコーディングとかが好きで、こういうウェブ系の仕事で生きていけないかなということを、なんとなく思い始めました。それでまずはブログを書いてみることにしたんです。だけど、まあ書くことがない。それで、僕が持っているもので人に伝えてアクセスが集まるもの、反響があるものって何だろう? と考えたとき、浮かんだのは『合コン』でした。当時よく行っていたので……(笑)」。

大橋さんは、自らの数々の体験をもとに、女性をタイプごとに分類して、どうやって仲良くなるかをブログに書いてまとめてみたところ、思いのほか、反響があった。それは、出版社勤務のOLが上司の指示のもとファッションブランドのマーケティング戦略を自身の婚活に活かしていくという小説『サバイバル・ウエディング』のプロトタイプとなるものだった。

「当時は、世の中にブログコンテンツがそれほど充実していませんでした。恋愛系コンテンツは特に少なくて、アクセスも集まり、うれしくてのめり込みました」。

昼は会社で働き、帰宅してブログを書き続けた。とはいえ、少々ブログが波に乗ったからといって、当然、会社をやめる決断には至らなかったという。

「いい大学入って、いい企業に勤めることこそが幸せだ……という価値観の中で育ったので、ブログがうまくいったくらいで、会社を辞めて別のことに挑戦しようという気持ちにはなれませんでした。僕の肌に合わなかっただけで、勤めていた会社は福利厚生や待遇も充実していて当時から文句のない超ホワイト企業だったので、なおさら決断できませんでしたね」。

どこかで辞めるキッカケを探しつつも、見つからないまま数年が過ぎた。しかし30代に突入し、現在も師と仰ぐ人物と出会ったことで人生が変わったという。

大橋さんが作家デビューするターニングポイントはどこにあったのか。【後編】で迫っていこう。

 

藤野ゆり(清談社)=取材・文

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