「喬介が卒業して14年になって、もう子供も出ていって夫婦2人でのんびりしてたら、25歳の子が“弟子にしてくれ”って来て。久しぶりに。あー、また若い子取ってしんどいなあって思いました。
僕も師匠に3年間、口移しで教えられて、ぼろくそ怒られて。それで3年目になって、しっかり覚えなければいけないところと、自分で勝手に言ってもいいところがわかるようになってくる。それを聞きわける耳を持つまでに3年かかるということです。
僕は5年目くらいに桂米之助師匠のところに稽古に行きましたが、米之助師匠はお酒が好きで、僕はお酒よう飲まへんのですが、無理にお付き合いした。お酒を飲みながらの稽古がしんどかったのでこっそり録音をしました。これは芸を身に付けるうえでよくなかった。録音していることが安心感になって、師匠の芸がうまく入ってこなかった。
だから弟子には『お前ええか、3年間でこっそり録音とか何かしたら破門やからな、この3年間は絶対聞き、口移しで覚えなさい』と。この間に基本ができるわけです」
落語は伝承芸
「落語は伝承芸です。でも師匠から10割もらっても、自分に合わないところが絶対3割はあります。お米と一緒で糠みたいにいらんところが3割。
この3割をいかに磨き取って、自分に合うものにしていくかが芸の修業やと思うんですね。だから、今度来る弟子も、それができるかどうかやなあと思いますね」
実は今、松喬のもとにはもう1人弟子志望者が来ている。弟子にするかどうか、迷っているそうだが一門が増えることは喜ばしい。
師弟で「泥棒落語」を得意ネタにして「上方落語盗賊団」を作っていただければ、と思っている。
(文中敬称略)
■七代目笑福亭松喬
1961年3月4日、兵庫県西宮市生まれ。兵庫県立西宮高等学校、大阪産業大学工学部交通機械工学科卒業。1983年、笑福亭鶴三に入門。笑福亭笑三を名乗る。1987年、師匠が六代目笑福亭松喬を襲名したのに伴い、笑福亭三喬に。
2017年10月、七代目笑福亭松喬を襲名。
2005年「第34回上方お笑い大賞」最優秀技能賞
2005年「第60回文化庁芸術祭」優秀賞
2007年「繁昌亭大賞」
〇出囃子「お兼晒し」
「昔は『米洗い』でしたが、ベテランの桂文紅師匠と、尼崎の寄席で2人で落語会を続けていたご縁で、文紅師匠がお亡くなりになった後、使わせていただいています。先代松喬の『高砂丹前』は恐れ多くてまだ使っていません」(本人談)
〇持ちネタ
「らくだ」「三十石」「饅頭こわい」「崇徳院」「欲の熊鷹」「道具屋」「動物園」「犬の目」「花色木綿」「おごろもち盗人」「仏師屋盗人」「てれすこ」「月にむら雲(小佐田定男作)」「転宅」「鴻池の猫」「一文笛(桂米朝作)」「穴泥」「鳥屋坊主」「ぜんざい公社」「首の仕替え」「近日息子」「鴻池の犬」「抜け雀」など。
「弟子入りしてから年に3本は話を覚えて、120本くらいはかけましたが、すぐ寄席でできるやつが10本。ちょっとネタ繰ってなんやかんやとかは2、30です。枝雀師匠みたいに常時60本いうわけにいかないですね」(本人談)
〇門下
笑福亭喬若
笑福亭喬介
〇公演予定
【六代目松喬・門弟会】
7月30日(火)18:30開演(18時開場)
会場:天満天神繁昌亭
松喬・遊喬・生喬・喬楽・右喬・風喬
電話:繁昌亭 06-6352-4874
【京都文博噺の会。松喬独演会】
9月22日(日)14:00開演(13:30開場)
会場:京都文化博物館 6F和室
松喬3席相勤めます
電話:otonowa 075-252-8255
※詳細は各主催者にお問い合わせください。
広尾 晃:ライター
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