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レンタル傘以上の可能性を秘めたサービスとしても注目


このように、いかにも便利そうなアイカサだが、例えば借りた傘を盗まれてしまった場合どうなるのか? アイカサの運営元である株式会社Nature Innovation Group(ネイチャー イノベーション グループ)の黒須 健氏に聞いた。

まず、もっとも気になる盗難対策だが、これは傘にダイヤルロックを装備することで対応しているとのこと。

ダイヤル式

具体的には、QRコードを読み取りレンタルを開始する際に表示された3桁の解除コードに合わせないと、傘が開かない仕組みになっているという。これなら仮にコンビニやカフェの傘立てで傘を失敬されても開くことができないので、そのまま持っていかれるリスクがかなり少ないわけだ。

「傘のダイヤルを、敢えて“緩く”してあるのも工夫のポイント。ユーザーがロックの操作をしなくても、自然とダイヤルが回ってロックがかかるようになっているんです」(黒須氏)。

ちなみにこのダイヤルロックは、特許を取得済みとのこと。普通の傘にも取り入れてほしい仕組みだと思ったのは、筆者だけではないだろう。

それでも盗難に遭ってしまったり、置き忘れなどで紛失した場合には、LINE経由で申告すれば課金を止められるほか、損料として860円支払うことで“買取”も可能になっているとのこと。

やむをえない事情で破損した場合は、保険が適用されるともいう。とはいえ傘のつくりが頑丈にできていることもあり、保険が適用されたケースは、ほとんどないそう。

さらにいえば、サービス開始以来、返却率はほぼ100%なのだとか。シェア傘サービスは国内外に先行事例があるのだが、ほぼ100%の返却率を続けているのは、アイカサのみ。そのため、海外でも大きく注目されているという。

「傘にダイヤルロックを施していることに加え、LINEを使っていることも返却率が高い理由です。LINEアカウントを捨ててまで、いわゆる“借りパク”をしようという人はいませんからね(笑)」(黒須氏)。

また、サービス提供の上で最大のネックとなる傘を置くスポットの数だが、こちらに関してはスポットを設置する店舗にとってのメリットがポイントになるとも。

アイカサ

「現状、ローソンの一部店舗にスポットがあるほか、都内ではカフェなどの飲食店や商業施設を中心に設置スポットが増えています。福岡では自治体の協力もあり市庁舎や交通機関などにもスポットが設置されるようになりました。シェアサイクルとは違い、シェア傘はスポットとなる傘立てが最小サイズでA4用紙程度と、店舗の小さなデッドスペースを活用できるほか、傘も借りられる雨宿り場所として集客効果も期待できるので、店舗側にも結構メリットがあるんです」(黒須氏)。

アイカサ 福岡では西鉄(一部の駅)改札付近にもスポットが設置されている。東京の駅でも実現すれば、かなり便利になりそうだ。


傘のレンタルという面だけでみれば、正直地味な商売とも見えてしまうのだが、傘を介した人の移動までを見据えたサービスと考えれば、意外な発展の可能性もありそう。単なる便利サービスというだけでなく、ビジネス的な観点からも注目すべきかもしれませんぞ。



石井敏郎=取材・文

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