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「前に昭島で取材してもらったとき、僕、2球で終わったじゃないですか。でもこの日曜日は、26球で62点取りました。『シックス』が5本で『バウンダリー』が6〜7本出て、『ストライキングレート』は238。こっちのほうに撮影に来てもらったらよかったな(笑)」

「シックス」とは、競技するフィールドの外枠をノーバウンドで越えること。文字通り1打6点。「バウンダリー」はゴロで外枠を超えること。こちらは1打4点。「ストライキングレート」とは打率のようなもの。ただ、打席に対する安打数ではなく、1球に対する得点数。1球あたりその打者が何点取ったかを示す値だ。238というと、1球あたり2.38点。クリケット関係者によると、これ、トンデモナイ数字らしい。日本人でこの値を叩き出したものはいないのではないか、と。

「日本代表の合宿に4日間行って、日本で一番うまいヤツらと練習できて、経験値を積んでスキルアップして、感覚的なところも追い込めた実感があって試合に臨んだらそんな結果が出ました。でもまた同じことを次の試合でできるかというと、決してイエスではない。相手チームも投げるボウラーも違います。ただ明確に自信を得ることができました」。
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そしてこの翌日、木村昇吾はインドに旅立った。世界最高峰の「インド・プレミアリーグ」を目の当たりにするために、今の自分がそこに参加したときどこまでやれるのか実感するために。

インド視察時、プロの試合を観戦する。世界のトップリーグはこんなスタジアムで戦っているのだ。お隣は元クリケット日本代表の斎田直朗さん。


木村昇吾の挑戦はまだ始まったばかりだ……と言いたいところだが、本人も言うように、そんな悠長な考えではダメなのだ。そして、ここは木村がアスリートとしての自分を100%出せると判断して選んだ場所。

取材時には「遅くとも9月にはオーストラリアに渡る」と覚悟を語っていた木村だったが、出発は6月半ばに早まり、すでに現地に渡っているという。日々、彼は経験を積んでいる。その尋常ではない成長速度と日本人離れした挑戦を、ぜひ見守っていこう。

 

【Profile】
木村昇吾
1980年4月16日生まれ。大阪府出身。尽誠学園高、愛知学院大を経て、2002年ドラフト11巡目で横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。'08年に広島へ移籍。内外野を守れるユーティリティープレーヤーとして活躍。16年より西武ライオンズ。同年、右十字靭帯断裂。翌年10月に戦力外通告を受ける。現在、クリケット選手。2018年1月より本格始動し、わずか2カ月で日本代表に選出。

武田篤典=取材・文 稲田 平=撮影

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