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2022.01.29

からだ

3kg太った=肝臓がフォアグラ化? 下戸も危ない「脂肪肝」のメカニズムを名医が解説

「知らないと怖いカラダのサイン」とは……

ああ、やっぱり正月に肥えたな……とお嘆きの方も多いだろう。残念ながら、そのヤバさは肝臓にも反映されるらしい。

いわゆる“沈黙の臓器”の異変を危惧するのは、東長崎駅前内科クリニックの吉良 孝文先生だ。

数ある肝臓病の中で今問題となっているのが、酒を飲む飲まないに関係なく起こる「脂肪肝」だと言う。
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話を聞いたのはこの人!吉良 文孝(きら ふみたか)●東長崎駅前内科クリニック院長。内科医・消化器内科医・内視鏡医としてのキャリアを活かし、2018年に開業。日本肝臓学会専門医でもある。

吉良文孝●東長崎駅前内科クリニック院長。内科医・消化器内科医・内視鏡医としてのキャリアを活かし、2018年に開業。日本肝臓学会専門医でもある。


3人に1人の肝臓がフォアグラ化!


――肝臓の病気といえば“酒好き” がかかるイメージですが……。

確かに、肝臓にとってアルコールが大敵であることは間違いありません。

肝臓はアルコールを分解する働きを持ちますが、大量の飲酒によりその過程でできる毒素が多すぎると、肝臓の機能に影響を及ぼします。

また、アルコールによって発生した毒素が肝臓内に脂肪を貯め込みやすくするため、「脂肪肝」になりやすいのです。

――「脂肪肝」という言葉は良く聞きますが、どんな病気なんですか?

脂肪が肝臓に溜まっている状態を「脂肪肝」と言います。



必要以上量の餌を与え、ガチョウなどの肝臓を肥大させた“フォアグラ”。あれが体内にできる、と言えば想像しやすいでしょうか。

元々は飲酒習慣のある人に多かった病気ですが、近年、アルコールを飲まない人にも確実に増えているのが特徴です。検診を受けた成人の約3割が「非アルコール性脂肪肝」になっていると言われています。

――体内にフォアグラが!? なぜ、飲酒習慣がなくても「脂肪肝」になってしまうのでしょう?

まず、体が太るのと同じメカニズムで肝臓も太っていく、と考えてください。

食べ過ぎや運動不足によって体が太るように、取り過ぎた糖質や脂質は中性脂肪として肝臓で貯まっていき、「脂肪肝」ができます。ですので、このメカニズムに関しては、飲酒習慣と関係ないのです。

「脂肪肝」は、スリム体型でも油断するべからず!


――では飲酒習慣がなく、太ってもいなければ、気にする必要はないわけですね?


実はそうとも言い切れません。「非アルコール性脂肪肝」は肥満体型でなく、痩せた人でも見られるのが特徴です。

例えば、前年より数キロ体重が増えてしまった。その増えたあとの体重が標準以下だったとしても、肝臓は「脂肪肝」になっている、ということもあります。

1年間で3〜4kgの体重が増えた人は要注意です。

在宅ワークによって通勤がなくなり、コロナ禍前より動かなくなった、ついつい間食が増えた、という人が急増しています。そんな環境は、「脂肪肝」を生み出しやすい状況とも言えますね。

――フォアグラ化した肝臓は、もとには戻らないのでしょうか?

いえいえ、決してそんなことはありません。肝臓は再生能力の高い臓器です。そのため、生活習慣を整えてバランスの良い食事にしたり、適度な運動を取り入れることで、正常な肝臓を取り戻すことができます!
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「“沈黙の”脂肪肝」は全身に病気を引き起こすことも


――「脂肪肝」だと、具体的にどんな症状が出るのでしょうか?

「脂肪肝」になったとしても、痛みや目立った症状などは出ません。そのため気付かず放置されてしまい、最終的に、肝臓が硬くなってしまう肝硬変や肝がんにまで進行してしまうのが最も恐れるケースです。

しかし、肝臓自体が悪くならなくても、全身の臓器に影響を及ぼす可能性があることも問題です。

――「脂肪肝」は、ほかの病気も引き起こしやすいということでしょうか?
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はい、その通りです。

そもそも「脂肪肝」は飲酒や食べ過ぎ・運動不足といった生活習慣の乱れで起こるため、同時に「生活習慣病」と呼ばれる病気を併発していることが多くあります。

「脂肪肝」があると、狭心症や心筋梗塞といった心疾患を合併しやすいと言われます。また、高血糖や高インスリン血症などにもなりやすいですし、ほかの生活習慣病を併発している場合は、さらに心疾患合併の確率が高くなります。ここが怖いポイントですね。

極端なダイエットはちょっと待った! 何事も“ほどほど”が大切


――症状が出にくい「脂肪肝」は、どうすれば分かりますか?


まずは、健康診断などで受ける血液検査をチェックしてください。

肝臓に関係するのは、AST/ALT/γ-GTPという数値で、これらが基準値を外れると要再検査となります。

また、健康診断では超音波検査(エコー検査)を受けると安心です。「脂肪肝」の有無や進行度が分かり、また肝炎や胆石といったほかの病気を見つけることもできます。

――「脂肪肝」を防ぐために俄然、ダイエットのやる気が出てきました!

う〜ん、ダイエット方法もさまざまあると思いますが、私としては何事も“ほどほど”をオススメしています。

例えば、食事制限では糖質制限がブームになっていますが、そういった場合には、糖質を摂らない代わりに脂質を摂り過ぎていることが多いため、結果としてエネルギー過多になっていることもあります。

過度な制限ではなく、無理せず長く続けられる方法が良いですね。

――なるほど、バランスの良い食事が重要ですね。同時に筋トレにも励みたいと思います。



運動も、肝臓のためには“ほどほど”がベストです。

筋肉は、トレーニングを止めてしまうと、今までの代謝バランスが崩れて脂肪がつきやすくなることがあるので、無理なく続けていけるボリューム・強度で行うのが理想です。

また最近の風潮として、筋トレと併せて大量のプロテインなどを摂る人も多いでしょう。肝臓は栄養を貯蔵したり、さまざまな物質を代謝する働きがあるので、栄養素や化学物質の摂りすぎは肝臓に負担をかける恐れがあります。

これは、栄養ドリンクやサプリメントを過剰に摂取することも同じです。サプリメントの摂り過ぎのせいで、肝障害が出ている患者さんもいます。

何事も“ほどほど”が肝臓を健康に保つ秘訣と覚えてくださいね。


「脂肪肝」を防ぐコツは、生活&運動習慣に正しくこだわり、年に1回は検査を受けること──吉良先生のこの教えを“肝”に銘じたい。

「知らないと怖いカラダのサイン」とは……
加齢とともに、我らのカラダに忍び寄るさまざまな不調。いつどんな病気に罹るかわからないからこそ、小さな変化に敏感でありたい。ということで、危険を知らせるカラダのサイン集をお届け。
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長瀬瑠美奈=取材・文

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