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幸せの掴み方をじんわりと伝えてくれるような映画

ブルゾン26万7300円、ニット13万2000円、パンツ8万6900円、スニーカー9万7900円/すべてトッズ(トッズ・ジャパン 0120-102-578)、腕時計101万6400円/カルティエ 0120-301-757

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現在公開中の映画『私はいったい、何と闘っているのか』は、主人公である中年サラリーマン・伊澤春男の日常を描いた、小さな偶然や奇跡が絡みあって紡がれるハートフルストーリー。

安田が演じる春男は感情を表に出さず、喜怒哀楽は常にココロの中にあるといったような、非常に掴みにくい男なのだ。

「これほどモノローグの多い作品はなかなかないので、挑戦させていただきました。単に相手の表情を見ながら喋るのではなく、芝居をしながら感情の“間(ま)”をどう埋めていくか、カメラのアングルに対してココロの声をどう語ればいいかなどを考えることがとにかく新鮮でした」。

春男は不器用ではあるが根は優しく、強く、そして温かい。共感できる部分について訊くと、「自分では良かれと思ってやるけれど、それが空回りしているところですね」と語り、「あ、そういえば」と言いながら、自身の行きつけのバーでの出来事を引き合いに出し、続ける。

「先ほど話したバーで、ある日ザ・ブルーハーツの解散ライヴのDVDを観ていたんです。超満員のファンの中、彼らは純粋にライヴを楽しみたい、会場の人たちに音楽を届けたいという一心で、全力でパフォーマンスをしているわけですが、それを観ているときに、涙ぐんじゃう自分がいたんです。

『この涙はいったい何だろう』と考えたら、ザ・ブルーハーツの音楽に対するひたむきさや、純粋なファンへの思いに触れたことで流れた涙だと気付きました。

それと同時に、これまで自分が無意識のうちに、いかに打算的に、そして無駄に強がって生きてきたかということに気付かされて、あのライヴが『人間ってそうじゃないよ』ということを示してくれたような気がしたのです。物欲や金銭欲が満たされることばかり考えがちだけどそうじゃない、人間ってひたむきに頑張って汗をかいてなんぼだなっていう。

おそらく『私はいったい、何と闘っているのか』という作品は、そういった幸せの掴み方はすぐそばにあるということを説教くさくなく、じんわり伝えてくれるような映画なのかなと思います」。

「ザ・ブルーハーツの話だけど何となくつながって良かった(笑)」と、安田は破顔しながら胸をなでおろす。

劇中、春男はさまざまな困難に見舞われるが、自身は普段、困難をどう乗り越えているのか訊いてみると、意外にも「だいたい逃避ですね(笑)」とひと言。

「21歳のときに初めて就職をしたのですが、そのときは10カ月で逃げましたから(笑)。今振り返ると、芝居がしたくて逃げたというより、仕事が嫌で芝居に逃げたという部分が大きかったと思います。

最近もよく逃避するのですが、僕は先ほど少し話をしたバーに行って酒を飲みます。それがまあ逃避といえば逃避です。そこで過ごすと次の日は不思議と元気になれるんです。

漠然とした不安ってみんなあるじゃないですか。あれって止まっているからいろいろと考えてしまうと思うんです。ジムに行くのでも散歩をするのでも、僕みたいに好きなバーに行くのでも何でもいいので、カラダを動かして脳に刺激を与えて悩む時間をつくらないことが大事なのかもしれないですね」。


3/4

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