会員で居続けるモチベーションは
1986年には全国のフレンドショップでの優待をスタートさせた。会員カードを提示すると山小屋やキャンプ場、アウトドアスクールなど全国1900カ所(2021年9月現在)を超える提携施設「フレンドショップ」で割引などの優待が受けられる。
当初は個別の店舗や施設の登録が主だったが、次第に地方自治体や観光協会の協力もあり、町・島・村ぐるみで優待サービスが得られる「フレンドエリア」も増えてより魅力が高まった。全国区に成長したモンベルだからこそ、全国各地の地域経済の活性化に協力し、エコツーリズムの促進をしていくという考えがこのサービスに込められている。
会員限定のイベント開催にも精力的だ。モンベルクラブ会員のための大規模イベント「モンベルクラブ・フレンドフェア」では、全国のフレンドショップやフレンドエリアが一堂に会するほか、カヤックやアスレチック体験が家族ぐるみで楽しめたり、普段割引を行わないモンベルのアウトレットセールがあったりと会員との交流を図るさまざまなコンテンツが目白押しだ(コロナウイルスの影響により2020年、2021年は中止またはオンライン開催)。
ほかにも、会員とのつながりを強くする活動の一つに独自の基金制度「モンベルクラブファンド」がある。年間1500円の会費のうち50円がモンベルクラブファンドに算入され、それを原資に災害支援や自然保護活動などが行われる。100万人の会員から集められるとなるとファンド基金は年間およそ5000万円にものぼる。
このような企業のCSR活動は一般的に企業の収益から捻出されることが多いが、その仕組みだと、収益が上がらなくなるとその原資も絶たれる。一方モンベルクラブファンドの仕組みなら、モンベルクラブ会員が存在する限り原資は常に確保され、恒常的な支援活動を行うことができる。環境問題がより注目される中で、会員にとっても会員であること自体が大切な自然や社会貢献につながるとなれば、会員で居続けるモチベーションにもなるだろう。
「お得」だけが人気の理由ではない
モンベルの会員制度は、商品がお得に買えるからといった単純な理由だけでなく、好きなブランドを通して自然環境保護や社会貢献ができるという点にも、人気の秘密がありそうだ。
実は国内ばかりではなく、米国のアウトドアグッズ大手販売チェーン「REI(レクリエーショナル・イクイップメント)」も、20ドルの入会費で会員向けサービスを提供している(関連記事:
米アウトドア市場で急伸、REIがミレニアル世代に愛される理由)。
同チェーンは年に数回のガレージセールや、返品された商品を格安で販売する中古品セールで知られるが、「自然の大切さが身に染みている」「サステナビリティに対する意識が高い」といったアウトドア愛好家をターゲットにすることが必然条件になる。
アウトドア製品メーカー、販売者は、「地球に何ができるか」を発信・提案していくことが、ブランディングや勝ち残りの上での重要な戦略になってくるのかもしれない。
参考:『モンベル 7つの決断 アウトドアビジネスの舞台裏』(辰野勇著、2014年、ヤマケイ新書刊)、
モンベル公式HP モンベルクラブ会員特典