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型にはめられてようやく自主性が出てくる

最初は意見など聞いてくれません。
「これこれこのようにしろ」と超具体的な指示を受けるだけで、「なぜこういうやり方をするのですか」と聞いても、「つべこべ言わずにまずやってみろ」「そんなことは自分で考えてみろ」でした。しかも、そのルーチン(私の場合は、学生への電話かけや面接、面談でした)の膨大な量を回していくのです。
しかし、そうすると不思議なことが起こります。自主性が出てくるのです。私たちは、自分の行動の自由を奪われたと感じたとき、自由を回復するように強く動機づけられます。 この動機づけられた状態を心理的リアクタンスと言います。まさにこれが生じてきたのです。

「どうしてやるのですか」ではなく「こうしてもいいですか」になる


自由を回復させたい私は、先輩や上司からの指示でやっていることに対して、「何かもっとよい方法を考えてやる」と思いました。
そうして「ああでもない、こうでもない」とルーチン作業の中で考えたうえで、満を持して「あの……こうした方がこういう理由でよいと思うので、こうしてもいいですか」と自分のアイデアを持っていきました。
そうすると、けんもほろろだった先輩や上司が、打って変わって「そう思うのならやってみろ」とやらせてくれたのです。そういう先輩や上司のスタンスで、私の自主性が発露したのは事実です。

「意見がないなら言うことを聞け」

私がその後マネジャーになって部下を持った際にもそれを真似しました。優しく「みんな何か意見はあるかな?」などと質問することはなく、「僕はこういう理由でこうすべきと思う。だからみんなこうしてほしい」とガンガン要望していきました。
正直に申し上げますと、「意見がないなら、俺の言うことを聞け」とすら思っていました。そしてわかったのは、結局、そういうマネジメントをしたら、部下は以前の私のように反発して、自主性を発揮し、意見をどんどん言ってきたのです。
部下に「ちょっといいですか」と小部屋に呼ばれて、私の出す方針への批判と改善案を言われたのは、一度や二度ではありません。

「抽象的な方針」の素晴らしさを理解してもらう

さて、冒頭に戻りますが、「抽象的な方針」や「見えないビジョン」に文句を言う部下に、「具体的な指示」や「見える行動マニュアル」を与えれば、リクルートで私が経験したようなことが起こるのではないかと思います。
つまり、部下はそこで初めて自主的になり、自分の意見を持ちたくなり、「抽象的な方針」や「見えないビジョン」の素晴らしさを理解するのではないかということです。
それがわからないなら、それはそれまでです。しかし、どんな人でも自主性はあると私は信じているので、それを発現させるためのきっかけとして、あえて上司である自分がハードルになり、部下に乗り越えようと考えさせては、と思うのです。
 
曽和利光=文

グラフィックファシリテーター®やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。www.graphic-facilitation.jp

 

「モヤモヤ り〜だぁ〜ず」とは……
組織と人事の専門家である“そわっち”が、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「20代から好かれる上司・嫌われる上司」の続編である。
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