筆者は分離課税の廃止や金融所得税にも累進性を持たせるという議論であれば価値があると考えるが、一律の引き上げは断固反対している。一律の引き上げは格差是正というよりも、ただ単に国民の税負担を引き上げるだけになるからだ。
しかし、さらにおかしな発言が政治家から飛び出した。のちに訂正されたが、NISAにも課税するというものだ。NISAは「少額投資“非課税”制度」のことを指すにもかかわらず、そこに課税とはもはや矛盾していて意味がわからないのだが、これもやはりSNS上で炎上することとなった。
NISAを活用すれば税金は払わなくていい?
前述のように思いもかけぬかたちでNISAに注目が集まることとなったのだが、やはり資産形成を考えるのであれば、NISAを活用しない手はないだろう。
仮に投資で100万円儲けたとしても、2割近くを税金で持っていかれてしまうのに対して、100万円損をしても、2割損失補填してもらえるなどということはなく、丸々損失になってしまう。投資家としては理屈ではなく、非常に不公平であるという感覚を持ってしまう。しかし、NISAを活用すれば投資で得た利益は非課税だ。
また、NISAといっても、「一般NISA」、「つみたてNISA」、そして未成年には「ジュニアNISA」と3種類の制度がある。
筆者は講演後に大人の方から「一般NISAとつみたてNISAのどちらが得か?」という質問をよく受けるが、そもそも制度の内容が違うため、どちらが得かというよりは、自分の目的や環境に適したほうを選べばよいと回答している。
毎月3万円ぐらいをコツコツと積み立てて投資をしたいのであれば、年間投資上限額が40万円のつみたてNISAがいいと思うが、年間で100万円以上投資をしたい、または個別銘柄に投資をしたいということであれば、自然と一般NISAを選ぶことになる。ただし、一般NISAは2024年から新NISAとして、一部投資条件に変更があるため、その点は留意したい。
そもそも、なぜリスクが伴う資産運用をしなければならないのか。2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書によって、「老後の30年間で約2000万円が不足する」と発表されたいわゆる「老後2000万円問題」が、国民が資産運用に興味を持つきっかけになったといわれることが多い。
だが、先進各国のなかで例を見ない低成長を続け、労働者の賃金が上昇しないままに非正規雇用の割合が増えているわが国においてはそのような報告書がなくともわかり切っていた話だ。あくまで報告書で提示されたのは一定条件の下での試算であり、2000万円でも不十分な世帯もあると考える。
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