嗅覚は視覚よりも早く脳に届くといわれ、いい香りは見た目よりも第一印象を大きく左右する。
そんなわけでフレグランスはきれいなおじさんにとって大きな武器となるわけだが、ここ数年、フレグランスシーンに大きな変化が巻き起こっているのをご存じだろうか?
それが“クラフト香水”と呼ばれるフレグランスだ。
専門店の代表に教わる「香水の新潮流」
「ル ラボ」のベチバー 46アンチ大量生産、アンチ大量消費のコンセプトを掲げるニューヨーク生まれのフレグランスブランド。オーダーを受けてから手作業で原料を調合するフレッシュブレンドというスタイルが特徴で、新鮮な香料を使うことで調香師の理想の香りを完璧に再現する。
男性から絶大な人気を誇るベチバー 46はペッパーやラブダナム、シダーといった温かみのあるパワフルな香りとミステリアスなオリバナムが調和し、奥深い色気の漂う香調を生み出している。
「通常のフレグランスは、買う側の性別や年齢層、人物像、ファッションといったマーケティングデータに基づいて作られたものがほとんど。
一方、ニッチフレグランスをはじめ、クラフト香水は調香師自身が自分の美意識とこだわりだけで生み出す作品性の強いフレグランスです」。
そう語るのは、世界中から厳選したニッチフレグランスを専門に扱うセレクトショップ、ノーズショップの代表を務める中森友喜さんだ。
「香水の本場であるフランスでも19世紀はクラフト香水が主流でした。調香師は自分の美意識を香りにするために香料の質や配合にとことんこだわり、込める熱量も尋常ではないため、超個性的なフレグランスになります。当然、数も限られるため、稀少性が高く、人と被りにくい」。
音楽の世界でいうなら、知る人ぞ知るインディペンデント系レーベルといったところか。
そもそもフレグランスは“目に見えない衣服”と呼ばれ、個性を演出するためのもの。自分らしさをアピールできるクラフト香水が感度の高い人々に注目されるのは自然のなりゆきだ。
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