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とはいえ、農学部出身だが本格的に農業に従事するのは初めて。一般的にはオリーブを栽培している会社などで働きながら栽培法を学び、独立するそうだが、山田さんには3年という約束がある。そもそも苗木を植えてから収穫できるまで3年かかるのだから、とにかくトライ&エラーでやるしかなく、「今思えばバタバタと効率が悪く、間抜けなこともしていた」と当時を振り返る。
オリーブ栽培にとって脅威となるのはオリーブアナアキゾウムシという害虫だ。枝や実を食害し、木を枯らしてしまうこともある。オリーブ農家では致命的なダメージを負う前に農薬で駆除するのが一般的で、山田さんのように無農薬で栽培しようという人はいなかった。
当初、島の人たちに有機栽培について話すと、鼻で笑われた感じがした。後から知ったことだが、都会から有機農業を志して地方へ来たものの、うまくいかずに去っていくのはよくある話だった。山田さんも、島の人たちに「またか」と思われたに違いない。

害虫の生態の観察を始めた

それでも、山田さんは有機栽培に挑戦するしか活路を見いだせなかった。そこでオリーブアナアキゾウムシについて知ることから始めようと資料や論文を集めつつ、自分で飼って生態を観察し始めた。
天敵のオリーブアナアキゾウムシは見つけたら捕獲し、殺さず飼育している(写真:山田オリーブ園)
畑で捕獲しては殺さず持ち帰り、常時100匹ほどを飼育する。ずっと観察していると天気や温度、時間帯によって行動のパターンがわかってきた。その知識をもとに畑を見て回れば、どこに潜んでいるのか予想がつき、捕獲の精度が上がった。「1匹ずつ捕獲するのだから、単純と言えば単純な方法だけれど、やろうと思ってもなかなかできないこと」。
こうして無農薬でのオリーブ栽培は軌道にのり、2011年12月、国内で初めて有機JASの認定を受けた。栽培開始から3年がたった2012年には、初めて実を収穫。山田さんはまず、農作業や島での生活をつづっていた自身のブログで、生の実を販売すると呼び掛けてみた。
理想のオリーブオイルを作るために苗木から木を育て、収穫、搾油まですべて自分たちの手で行う(写真:山田オリーブ園)。
「この値段で売れるなら食べていける」という値段をつけ、インターネットを使った直接販売が可能かどうか、試してみたかったのだ。
すると購入希望者がすぐに表れ、予定数をすべて販売できた。オリーブの塩漬けを手づくりしたい人などがいて、市場ではあまり出回らない生のオリーブにニーズがあったのだ。
このペースで売れるなら、あとは量を作れば採算は取れる、と判断。翌年からオリーブオイルも販売を開始したところ、もくろみどおり注文が相次いだ。


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