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宇宙でオリンピック!? 極限だからわかる可能性。

金子 為末さんの活動で衝撃的だったのは、2007年に開催した東京丸の内で「東京ストリート陸上」です。社会に陸上競技をアピールするために、競技トラックを飛び出して、丸の内で開催するという発想は、どこから浮かんできたんですか?

為末 きっかけはクイズ番組で賞金を獲得したことなんですけれども(笑)、根本にはグラウンドに観客が来ないという問題があったんです。だったら、人がいるところに持って行こうと。

グラウンドの中で陸上が行なわれる、という固定概念が崩れることに興味があります。なので宇宙空間でやるスポーツ、重力を前提にしていないスポーツってどういう形になるんだろうと想像したりしますね。バスケットボールのリングもきっと違う形になるのかなとか(笑)。宇宙スポーツを開発してみたいですよね。
2007年、為末さんは東京・丸の内で陸上競技を実演するイベント「東京ストリート陸上」をプロデュース。自らも参加選手として、ハードルを飛んだ。 提供:株式会社Deportare Partners
金子 それは面白い。いつか宇宙ステーションでオリンピックを行う日が来るかもしれない。

為末 それから宇宙飛行士の方たちの身体的な変化についても興味はありますね。私は身体を通じて人間を理解するというのをライフワークにしています。歩くという行為は、極めて無意識的なんです。どうやって歩き始めたか覚えている人はいないですよね。気がついたら歩き始めている。

走るっていうのは、その無意識の世界に手を突っ込むようなスポーツなんです。人間の身体動作のどこまでが無意識で、どこからか意識的なことなのか。もっと言えば、意識的ってどういうことなのか。でもそれは競技者だけでなく、日常生活の中にもあることなので。

重力のない閉鎖空間っていう極限的な状況で、人間はどうなるのか。ウサイン・ボルトが無重力状態で走っている映像を見ましたが、結構足が遅かった(笑)。やっぱりボルトといえど、地面に足がつかないとあんまり速くないんだと思って。そこで重力という当たり前の存在に気づくんですよね。

極限状態に行くほど、いろんな枠組みや前提を外して、発見できることがあるだろうなと思うんです。
今回搭載される超小型衛星の1つ、TeikyoSat-4の試験に立ち会う金子グループ長(写真右)。
金子 あらゆるケースを想定して計画通りに行うというのがJAXAの宇宙開発の大前提ですが、実際にやってみたら全然違うかもしれないプロジェクトもありますね。

もちろん予想は立てますが、実際にやってみないとわからない。宇宙には、そういう可能性がまだまだあるはずで、このプログラムは今後7号機まで続くので、これからもっと新しい宇宙利用のミッションを発掘して実証していきたいなと思っています。
 
Profile
提供:株式会社Deportare Partners
元陸上選手
為末大 TAMESUE Dai

広島県出身。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400mハードルの日本記録保持者(2021年9月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。Youtube為末大学(Tamesue Academy)を運営。国連ユニタール親善大使。最近は、釣りを研究中。

JAXA 研究開発部門
革新的衛星技術実証グループ
グループ長
金子豊 KANEKO Yutaka

長野県出身。革新的衛星技術実証2号機、3号機のプロジェクトマネージャ。月惑星探査の研究、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)の開発、超低高度衛星技術試験機(SLATS)の開発などを経て、現在に至る。趣味は旅行(特に温泉好き)。

村岡俊也=取材・文
著作権表記のない画像は全て©JAXAです。
記事提供:JAXA

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