スタイリストとして活動を始めて30年。言わずもがな、村上さんはその歳月を膨大な量の服と向き合って過ごしてきた。
「面白いことに、経験を積むほど自分自身ではトレンドを追う気が薄れていきました。もともと大きすぎもピタピタも好きではないのもあるけれど、今の自分の年齢でドロップした肩のモノを着たいとは思いませんね」。
そんなシルエット観もあり、古い服でも出番は多い。この日のブレザーは10年前の3.1 フィリップリムで、インディビジュアライズドシャツは今ではまず見ないピケ地のピンタック入り。
そして、デニムはリーバイス501。高価な古着でもなく、ひと昔前のレギュラーモデルだ。
「普通のものを自分らしく着たい。いろんなデザイナーが過去のアーカイブを真似て服を作るのを見てきたので、何が本物かを意識するようになったのだと思います。
そう捉えると、ワードローブにはまだまだ宝が詰まっている。向き合うべき普通な服は誰にでもあるはずので、もっと楽しんでほしいですね」。
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