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西表島の“不思議な浜”。行く間にも驚きが……

気温は東京より低かった。しかし快晴時の日差しは強烈。紫外線対策は必須だ。
「イダの浜」は西表島にあるビーチながら船でないとアクセスできない不思議な場所。というのも西表島には島を一周する道がない。にも関わらずビーチは「船浮」という集落にあるのが興味深い。
陸路では外部とつながれない陸の孤島ながら、昔から住む人たちがいるのだ。
この秘境中の秘境にいく船は、島の“行き止まり”にある白浜港から出る。船浮に暮らす人たちが日常的に使う港に観光色はなく、ローカル路線バスの停留所のような雰囲気だ。
現在の白浜港は生活のための港。しかし明治から第二次大戦終戦にかけて西表炭鉱があった時代には、産出した石炭の出荷拠点だった。
そこから星野リゾート 西表島ホテルが手配する船に乗り込み沖を目指す。
陸から離れるにつれ海はエネラルドグリーンから濃い青へ。本島に次いで沖縄県内で2番目に大きな島を覆う眩い緑が目に映る。
白浜港を出て目に入る西表島の自然。島は緑に覆われ、海は真っ青だ。
通常なら白浜港から「イダの浜」までは10分ほど。しかしこのときは海中撮影のため、沖に停留してシュノーケリングで海を漂った。
そして驚いた。
クマノミをはじめとした色とりどりの熱帯魚がすぐそこを泳ぎ、ブダイもいれば、海亀もいたのだ。
少し潜るだけで海のクオリティは一目瞭然。海面のすぐ下でサカナたちが泳いでいるのが分かる。
透明度が高いから海の溝の奥深くまで見ることができる。足ヒレをバタつかせて移動するたびに海底の地形が変わり、あらゆる岩と岩の間ではサカナたちが無邪気に泳いでいた。
 

海に浮いているだけで少しも飽きない「イダの浜」

海中の大自然に見惚れ、少しも飽きずに眺めたのちに「イダの浜」へ上陸。
天然色に溢れる「イダの浜」の独占タイムは旅のハイライト。次の予定がなければ、もっと留まっていたかった。
ここでの驚きは、まず砂浜の様子だった。歩くと、サクサク、という感じで、まるで細かく砕かれたサンゴでビーチを敷き詰めているような印象を持った。
海の砂にありがちな、肌にまとわりつく不快な感じが一切なかったのだ。
美しい光景。お湯のように温かい海。波打ち際にプカプカ浮かぶだけで、ゴクラク。
そして浅瀬の続く海ながらサンゴがあり、そこにもサカナたちの姿があった。しばらく様子を眺め、気分を変えて仰向けになってプカプカと浮いてみる。
海は温かく、太陽の日差しも心地良く、思わずまどろんでしまうほどだ。
沖合でのシュノーケリングが難しい幼い子供でも「イダの浜」は楽しめる。水中メガネをつけて海中を覗けば、クマノミさんと「こんにちは」。
ランチはヤドカリがトコトコと歩くビーチの木陰で、船長でガイドの屋良誠一さんが用意してくれたお弁当で舌鼓をうった。
箸を進めながら見る目の前の光景は美しすぎて、さらにビーチにいるのはほんの数名のために静かで、時が止まったような錯覚に陥った。
西表島生まれという生粋ロコの屋良船長。東京で会社員も経験したが、島が恋しくなり戻ってきた。
サーフィンもダイビングも釣りもしないビーチ滞在で、これほど満たされたのは初めてかもしれない。
したことといえば、ただ海に入って泳いだだけ。それだけで身体は喜んでしまった。
見渡す限り広がる「八重山ブルー」の絶景。白浜港への帰路、しばし言葉を失う。
この「イダの浜」クルーズが、西表島に行くならぜひ体験してほしい私的なハイライトのひとつ。
そしてもうひとつのハイライトは、夜の「ナイトサファリツアー」だ。


3/3

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