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2021.10.01

ライフ

名作と語り継がれる予感。天童木工が若手建築家と作った椅子が、何かと良い

「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
昨年、80周年を迎えた天童木工が、「ジャパニーズモダン」を再考しようと、建築家、デザイナーの中村拓志、二俣公一、熊野亘らとともに新作家具を発表。
天童木工はデザイン力が豊かな木製家具メーカーで、名作がたくさんあるのですが、現代の若手デザイナーたちと組んで新作を作ったということがなんだかとてもうれしいです。
きっと今回の作品も数十年後には名作として受け継がれているかもしれないですね。
体にフィットするなめらかなカーブ。建築家の頭脳が生んだハイセンスな椅子に、藤井隆行が感動!
そのなかで、友人でもある二俣くんの作った椅子が気に入っています。とにかく彼の建築が好き。いい意味ですごく普通、決して派手さはないのですが、ディテールが面白く居心地がいいんです。
この椅子は、デザインはもちろん座り心地も良く、建築家としての経験が集約されているように感じました。
“座り心地”というのは、現代ではかなり重要なポイントですよね。数々の名作を見返してみても、ジャン・プルーヴェは見た目がスタイリッシュだけれど座り心地はいまひとつだし、デザインが優れていても、人間工学に基づいて座り心地まで計算された椅子はあまり多くなかったような気がします。
洋服もそうですが、毎日使うことを考えると、デザインだけでなく使い心地も考え抜かれ、機能性を両立させたものが今は求められていると思うんです。
僕は1950〜’60年代の家具が好きですが、そこから考えると60〜70年くらい経っているわけで、技術的にはすごく進化しているはず。利便性や多様性も大事になっています。
H740×W637×D484×SH433×AH675mm 9万7900円/天童木工 0120-01-3121 
「天童木工」のサンド
丹下健三や剣持勇、柳宗理といった建築家やデザイナーと協業してきた天童木工が、新たに若手建築家、デザイナーと天童木工の“今”を表現。こちらは二俣公一氏が手掛けた一脚で、現在先行販売受付中。
天童木工の一番の特徴といえば、成形合板を実用化させて、強くてしなやかな家具を生み出していること。その技術を応用した彼の椅子は、無垢材の脚を、規格化された複数の成形合板パーツで挟んで留めたもので、どの角度から見ても成形されたカーブが際立っています。
僕が最も気に入ったポイントもまさにそこで、なめらかなカーブは、体にぴったりフィットして座り心地も抜群。モルタルとか和室などの空間にも似合いそう。
一見派手さはないのに、見れば見るほど面白い。木を扱う日本の技術ってすごいですよね。いいモノは多くを語らず、すっと日常に馴染んでくれるんです。
[藤井隆行 プロフィール]
東京を代表するブランド「ノンネイティブ」のデザイナーで、ファッションからライフスタイルまで一貫したこだわりを持つ。「8月末にラグビーで有名なカンタベリーの新ブランドとのコラボ商品がデビューしました。ぜひチェックしてみてください」。
「藤井隆行の視点。私的傑作批評」とは……
世の中のありとあらゆるプロダクツから、「ノンネイティブ」藤井隆行さんが独自のセンスと審美眼でモノをセレクト。デザインとは? 実用性とは? 買い物の醍醐味とは? ブランド名や巷の情報に惑わされず、本当に自分に必要なモノと出会う方法を指南。
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竹内一将(Ye)=写真 町田あゆみ=文


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