自分は若かりし頃、ヨーロッパの貴族みたいになりたいと本気で思っていました。「服は欧米の銘品こそ至上」という考えに捉われすぎていて、’90年代の黄金期の東京ストリートを完全に無視して過ごしてきたのです。
今になってそのことを少し後悔しています。その反動もあって、30代以降は興味を持ったら貪欲に取り入れるスタンスでファッションを楽しんできました。
| ファッションジャーナリスト 増田海治郎さん Age 48 ファッションショー中毒で、コロナ禍前の年間取材本数は約250本。6月のパリコレクションも日本から唯一渡航。著書に『渋カジが、わたしを作った。』(講談社)がある。 |
今の自分のファッションのモットーは、マイケル・ジャクソンの“ムーンウォーク”。前に進みつつ後ろにも進むイメージで、最新のモードを追いつつ過去をディグることを同時に行っています。
そして、スタイルと呼べるほど確固たるものではありませんが、①ベテランから若手までの日本の面白いブランド、②ジャンルレスの古着、③欧米の銘品、を自由に組み合わせる形に行きつきました。
今回はその中から「感動した日本の服」を紹介したいと思います。
サイドスロープのニットは、もう13年ほど着続けています。ファクトリーブランドなのでクオリティは言わずもがなですし、デザイナー兼代表の脇坂大樹さんの色使いに魅せられ続けています。
今秋はライトブルーのカシミヤセーターとマフラーをセットでオーダーしました。
ネペンテスは永遠の憧れの店で、清水慶三さんのコピーみたいになってしまうのが嫌で、ずっと自主禁止令を敷いていたんです。でも、3年ほど前に魅力的な花柄のジャージーに出会い、解禁したらもうダメ(笑)。
着やすいし華やかだし飽きがこないしで、毎シーズン買いまくっています。今秋はファーのコートとハットをオーダーしました。
エンダースキーマは世界規模のラグジュアリーブランドに飛躍する可能性を秘めている日本のブランド。
特に好きなのがヌメ革のオマージュライン。自分色に染まっていく過程も面白いし、この靴を最初に履くときの喜びは、自分にとって最高にラグジュアリーな行為です。
9月に発売予定のトッズとのコラボレーションも楽しみ。100年後に日本のエルメスみたいな存在になってほしいし、なれると思っています。
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