こよなく正しい掛け算だった
「今年、リーボックが改めて注力しているのが“レトロランスタイル”といわれるジャンルです。『クラシックレザー』、『クラブ シー』、そして三本目の柱に据えたのが『アズテック』でした」(マーケティング担当、滝正芳さん)。
ブルー、イエロー、レッドのアイコニックなカラーパレット、くったりしたナイロンとスエードのコンビといった「アズテック 2」のスペックを踏襲しつつ、これを厚く、構築的なソールでアップデートしたのが「CL LEGACY AZ」の勘どころだ。
付け加えるならば、斜めにそぎ落とされたヒールキックも「アズテック 2」を彷彿させる。
そこには「クラシックレザー」のDNAもまぶされている。レッドで染めたサイドラインにその面影は見ることができるし、「アズテック 2」に比べればボリューミーな印象のボディはたしかに「クラシックレザー」のそれだ。
そのボディは、あらたに履かせたソールとこれ以上ないほどの相性の良さを見せる。つまり、過去(「アズテック 2」のアッパーデザイン)と現在(ソール)をつなぐブリッジの役割を果たすのが「クラシックレザー」のDNAというわけである。
モダンを追求するにあたり、過去のモデルを掛け合わせる、という発想とその完成度には舌を巻いた。スニーカー業界ではこのアプローチがちらほらと出てきてはいるが、記憶に残るようなモデルは今のところ誕生していない。
「CL LEGACY AZ」は色使いといい、プロポーションといい、非の打ちどころがなかった。
リーボックは機能競争の先頭を走るその返す刀で、いち早くヘリテージと向き合ってきた。すでに発展的解消を遂げたが、往年の名作をカテゴライズしたリーボック クラシックは好例である。その誕生は1992年。いまから30年前のことである。いってみればリーボックは、年季が違うのである。
今回はオールドファンも感涙するだろうアイコニックなモデルをピックアップしたが、「CL LEGACY AZ」にはこれより先もゴアテックス搭載のモデルやリサイクル素材を採り入れたモデルなどゆうに20近いモデルのリリースが控えている。
ひとつのモデルに対し、これだけのバリエーションが一斉にリリースされるのは過去を振り返っても「インスタポンプフューリー」くらいだという。リーボックがどれだけ力を入れているかがわかるだろう。
オールドファンが認める出自
リーボックはフィットネスシューズや「インスタポンプフューリー」に代表されるバスケットボールシューズのイメージが強いブランドだが、そもそもその名を知られるきっかけとなったのは陸上スパイクである。
1924年のパリ五輪で金メダルを獲得したハロルド・エイブラハムス(男子100m)とエリック・リデル(男子400m)が履いていたのはリーボックだった。1981年に公開された映画『炎のランナー』は実在するアスリートを描いているが、それがこのふたりである。
オールドファンが「アズテック 2」と「クラシックレザー」を愛してやまない所以であり、そして「CL LEGACY AZ」は、そんなオールドファンをも唸らせるに違いない。
竹川 圭=取材・文