服を能動的に選ぶようになって30年近くになる。
おもにモードを追い求め、6年近く前からミラノやパリのコレクション取材を重ねて以降、その傾向はさらに強くなってきた。
| 朝日新聞 編集委員(ファッション担当) 後藤洋平さん Age45 世界の主要コレクションを継続的に取材。モード服を敬愛し、仕事中も“らしからぬ”ファッショナブルなスタイルに身を包むことから、「本当に新聞記者?」と疑われることも多々。 |
自らのスタイルを客観的に見ると、取材や出社の予定がある日は特に色やデザインが際立つ選択が多いように思える。
無意識のうちに相手に印象を残したい、あるいは装いをある種の「武装」と捉える思惑を反映しているのかもしれない。
その最たる例がコム デ ギャルソンだ。好きで着る。だが一部の人からは眉をひそめられかねない。そんな服を選んでいる以上、仕事でしっかりと結果を残すほかない。
所有するギャルソンの服はほとんどがオムプリュスだ。ただ、同じく川久保玲が手掛ける「シャツ」のラインも外せない。私が学生時代だった1990年代は円高かつユーロ移行前で、高品質なのに比較的求めやすかった思い出のブランド。その輝きは年々増している。
一方、気心の知れた友に会う日やオフに袖を通す服はベーシックなものも多い。中高時代から好みが変遷してきたボーダーTの近年のお気に入りはアナトミカ。
特にここ数年はヴィンテージの腕時計を着ける日が多く、確固たるベースを持つ服が合わせやすい。
カジュアルな装いでは、気楽でも雰囲気があり、ひと味違うアイテムが好きだ。ボトムスではブルネロ クチネリのスウェットパンツがその筆頭格。
以前は東京を離れる機会も多かったが、プリーツ代わりに施されたラインは、スーツケースに放り込んでも着用時にまったく影響せず、ラフなのに品がある。
冬の外出時に手に取ることが多いのはザイノウエブラザーズの大判ストール。ベビーアルパカのヌルリとした肌触りが心地良い。巨大なので巻き物というよりアウター使いで、アフガン巻き一択だ。
5年前、編集者の竹内大さんに連れられて訪れたパリの展示会でオーダーしたもの。大さんは3年前に突然他界した。ストールの柔らかさに触れるたび、海外取材で新参者だった私に優しかったあの人を思い出す。
海外ブランドをじっくり取材するようになって、日本ブランドの素晴らしさに改めて気付かされることも多い。ムジラボの服には品質と価格に驚かされ、よく色違いで購入している。
イタリアで経験を積んだ日本人デザイナーが手掛けるシーオールのアルゼンチン織り、デニムブランドのフルカウントによる和歌山の吊り編みスウェット、メゾンミハラヤスヒロがアジアを中心に支持を広げる粘土でかたどったソールのスニーカーなどには、作り手の魂が宿っていると感じている。
清水健吾=写真 梶 雄太、来田拓也、星 光彦、野上翔太=スタイリング 増山直樹、早渕智之、長谷川茂雄、いくら直幸、髙村将司、大西陽子、森上 洋、中田 潤、今野 壘、オオサワ系、大木武康=文