原宿の小道を曲がってすぐにある、こぢんまりとした書店。「ブックマーク」の入り口で渡辺真史さんを迎えてくれたのは、マネージャーの持田 剛さんだ。
渡辺 開業何年目になるんですか?
持田 今年で8年目ですね。1993年にタワーブックス(かつてタワーレコード渋谷店7Fにあった洋書フロア)で働き始めてから、本一筋で。気付いたら今年で40代最後の年です。
渡辺 僕は今年で50歳ですが、やはり本の世代。まさにタワーブックスに入り浸っていました。情報や感覚のインプットは本に頼っていた。
持田 貪欲でしたね。今はデジタルの発達で情報の収集先が変わりましたが、本が持つ魅力は変わらない。むしろ、モノとしての価値が上がっています。
渡辺 アナログの再評価ですね。
持田 発行部数が少ない珍しいモノにプレミアム価格が付いたり、本に意匠を凝らす作家やアーティストが増えているのも理由です。
渡辺 単なる情報ではなく、ひとつが作品であり、本であること自体の価値が見直されている。ところで、この店はマーク ジェイコブスが運営していますよね。なぜ、ファッションブランドが書店を始めたんですか?
持田 もともとマーク本人がアートコレクターでもあって、アートブックもたくさん集めていました。マンハッタンのある小さな書店の閉店のニュースを受けて心を痛めたマークが、そこを居抜きで借りて改めて書店を始めたのがきっかけです。
渡辺 なるほど。この店のセレクトは持田さんが担当されているのですか?
持田 アメリカ本社ディレクターの選定リストをベースに東京のマーケットに合うものをチョイスし、並行して、日本独自のセレクトをディレクターの承認を取って仕入れています。アートに関する洋書を中心に、バッグやアクセサリーも取り揃えています。
渡辺 こだわりがすごい。アメリカでは本のイベントが根付いていますよね。
持田 そうですね。この店も地下にアートスペースを併設していて、イベントも好評をいただいています。心がけているのは、イベントに来店されるファンがカジュアルに作家と話ができて、楽しめる空間です。
渡辺 そう、閉鎖的じゃなく自然でオープンな感じがいい。ちなみに、ここは立ち読み可能ですか?
持田 大丈夫ですよ。ここのスタッフは話好きなので、お客さまにお声がけさせていただくことも多いです。
渡辺 そうやって人と直接関わり合えるのも、リアルの醍醐味ですよね。
若木信吾=写真 増山直樹=文