課題解決に向けた積極的な姿勢からサステイナブルな未来を「見る」
現在ヴェジャが抱えるサステイナブルな課題はいくつかあるが、近年徹底的に取り組んだのがカーボンフットプリント(※1)の開示とその向上である。
’19年に算出したカーボンフットプリントは、およそ3万6000tの二酸化炭素と同等量。比較的多い数値だが、ブラジルの工場や車両の排出量、オフィスや店舗の排出量に加え、「原材料の生産や流通、そのほかすべてのパートナーから排出される二酸化炭素」の量を計上しているからだ。
「多くの企業はサプライチェーンからの排出量を計算しないのが現状。そこで私たちは、ヴェジャといういち企業が存在することで排出される二酸化炭素の量を、徹底的に調べました。こういうことはとことんクリアにしなければいけない。甘い基準からは、不完全な目標しか生まれないのです」。
そこで明確になったのが、二酸化炭素排出量の割合である。最も多かったのはヴェジャのどの部門か。それが実は、創業以来サステイナブルであると固く信じてきた原材料──天然ゴムやオーガニックコットンやレザー──の生産現場からの排出であった。それは全排出量の71%を占めていた。
ショッキングだったが、問題が生じれば解決に向けて歩を進めればいい。原材料からの排出量が多いのなら、素材をリサイクルしよう。
このリサイクルの課題は、カーボンフットプリントを算出する以前から、創業者のふたりの悩みの種だった。くしくも二酸化炭素排出量の現実を直視したことで、リサイクルへの決意と取り組みはスピード感を持って進んでいく。
そのひとつの結実を得たのが、母国フランス、ボルドーに今年オープンした新たなストアである。
「このストアでは古いスニーカーの回収、クリーニング、リペアの工程を実際に見ることができます。見ることで、お客さまに新たな気付きが生まれる。
もちろんリサイクルについては、まだ具体的な成果は得られていません。でもここから、フランスはもちろん世界に向けて、リサイクルの必要性と可能性を発信することができるんです」。
そう語るセバスチャンの口調は精力的で、聞く者に新たな希望を抱かせてくれるような気がした。ポルトガル語で「見る」という意味を持つヴェジャ。スニーカー作りを通じて、サステイナブルの未来を見つめ続けているブランドである。
(※1)カーボンフットプリント
個人や企業が活動するときに排出される、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガス。その内容を調べ、把握することをこう呼ぶ。排出量の単位には「t-CO2eq」が用いられる。
VEJA ヴェジャ
創業年:2005年
創業者:フランソワ・ギラン・モリィヨン、セバスチャン・コップ
本社所在地:フランス・パリ
従業員数:220名
直営店舗:パリ、ボルドー、NY
Sustainable Keywords
・天然ゴムをはじめとした自然素材の活用
・厳格に算出したカーボンフットプリント
・リサイクルを可視化する店舗をオープン
鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文