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40年を経た今も鮮明に思い出すサーフショップのボスの言葉

ブレンドンさんの出身はニューヨーク州ロングアイランド。そのほぼ中央に位置するグレート・サウス・ベイで育った。大都会マンハッタンからクルマで約1時間ほど。子供の頃は多くの時間をビーチで過ごしたという。サーフィンを覚えたのも、もちろんこの場所だ。
「環境問題について興味を持ったのは14歳の頃でした。当時私が働いていたサーフショップのボスが、サーフ産業やサーファーたちの活動についていろいろと教えてくれたんです」。
1980年代半ばの話である。そのボスは「サーフィンに関わる企業は、環境を守るために先陣を切って行動しなければならない」と、常々話していたそうだ。その行動ひとつで、環境は復活もすれば悪化もするのだと。彼は大手アパレル企業が発送の際に毎回詰めてくる「発泡スチロールの緩衝材」について、心底怒っていたという。
「そもそも服はワレモノではありませんからね(笑)。あの緩衝材は何の理由もなくゴミとなる“公害そのもの”だったと思います」。
[左]マイクロプラスチックの流出を防ぐ目の細かいランドリーバッグ。フリースなどを洗濯するときに活用したい。オリジナルの商品以外にこんなサステイナブルなアイテムも取り扱っているのだ。4400円/グッピーフレンド(ノア クラブハウス 03-5413-5030) [右]リサイクルコットンTシャツの配送時に使われるビニール袋。植物由来の原料を配合した、環境に配慮した素材を使用している。
こうしたブレンドンさんの実体験は、ノアのモノ作りに大きな影響を与えている。第一にサーフィンそのものから受けた影響だ。ボードショーツのラインナップはサーフアパレル並みの充実ぶり。服だけではなく、オリジナルのサーフボードやサーフワックスまで販売している。
サーフィンは、海や水に関する環境問題にセンシティブに反応する心を育むアクティビティでもある。海洋汚染の一因となっている使い捨てペットボトル。そのペットボトル削減の一助となるアイテムとして取り扱っているのが、「mizu」のステンレスボトルだ。
[左]カリフォルニア発の「mizu」のステンレスボトル。ブランドのスタート以来、シーズンごとにデザインを変更してリリースしている定番商品だ。各7480円 [右]夏らしい、明るいプリント柄のトートバッグ。こちらもリサイクルキャンバスを素材に使用する。シンプルな作りで使い勝手も抜群な今季の新作。9900円/ともにノア(ノア クラブハウス 03-5413-5030)
「もちろん私たちの取り組み自体は小さなものです。でも“ペットボトルを購入しない”という選択が少しずつでも増えていけば、大企業はペットボトルの生産をやめざるをえないでしょう」。
またアパレル企業は宿命的に、流通から販売の段階までプラスチック由来の大量の梱包材や緩衝材を使う。ノアも例外ではないが、過剰包装をやめ、輸送時のビニールは土に還る素材などを試しているという。
また購入時のショッパーにはリサイクル紙を使用。きっと14歳の頃に聞いたサーフショップのボスの怒りの言葉が、ブレンドンさんの頭のどこかに引っかかっていたのだろう。
リサイクルをキーワードとした“サステナ服”も多数ラインナップする。リサイクルキャンバスを使用したトートやボストンバッグに、リサイクルナイロンとリサイクルカシミヤの中綿を使ったパフジャケット。
カラーバリエーション豊富なリサイクルコットン100%のTシャツは、今やノアを代表するアイテムと言っていい。
[左上]リサイクルコットン100%のTシャツ。ブレンドンさんも個人的にお気に入りという、完成度の高い一着だ。各6050円 [左下]人気のボードショーツ。カラフルで洒落たパターンのものが、毎シーズン多数リリースされている。1万7600円 [右]_ペイズリー柄のパフジャケット。シェルには「エコナイル」と呼ばれるリサイクルナイロン素材を、中綿には「キャッシュボール」というリサイクルカシミヤ素材を採用している。ダウンにも劣らない軽さと暖かさを発揮してくれる逸品だ。7万2600円/すべてノア(ノア クラブハウス 03-5413-5030)
「モノとしてのクオリティも素晴らしいと自負しています。柔らかすぎず、少しだけ重くて、適度なフィット感がある。何度洗っても形崩れしない。若い頃に着ていたTシャツを思い出します」。
環境問題への配慮と、リサイクル素材の積極的な活用。そしてサステイナブルに対する視点として大事にしているのが「長く着られる服を作る」ことだ。つまりトレンドに左右されない、高品質でタフな服。
例えば定番商品のラガーシャツやデニムがそれだ。
ベーシックなラガーシャツも人気商品のひとつ。カナダにあるラガーシャツ専門の工場で生産されており、その耐久性はきわめて高い。長く着られることを念頭に置いて作られた“サステナ服”なのである。1万9580円/ノア(ノア クラブハウス 03-5413-5030)
ひとつの服を長く大切に着れば、おのずと無駄な消費が減るというわけである。


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