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日本に誕生しだした本格的なエコツーリズム

星野さんは「日本国内に見られ始めた欧米のようなエコツーリズムの動きはとても興味深い」と言う。最近でも「ザ・リッツ・カールトン沖縄」が、環境保全、海洋保護をテーマにした体験プログラムをスタートするというニュースが流れた。

提供するサービスはサンゴの植え付け。サンゴの生態に関するレクチャーを座学で受講し、ラグーンでサンゴを植え付ける実体験を通して、宿泊客は沖縄の自然環境について学ぶことができるというものだ。

そして「星野リゾート 西表島ホテル」では、日本発のエコツーリズムホテルとして3つの柱を設けて展開していくという。

1つ目は貴重な自然を伝えるツアーの提供。世界に誇るネイチャーアイランドの西表島を熟知するガイドを用意し、アクティビティなどで楽しみながら周辺環境への理解を促したいと考えている。

2つ目はエコロジカルな運営。西表島は7月の世界自然遺産登録が期待される場所。環境負荷を抑えるため、特に廃棄物を極力出さない離島でのリゾート運営を目指す。ペットボトル入りの飲料は廃止してウォーターサーバーを設置し、ゲストにはタンブラーを用意するという具合だ。

3つ目は自然保護活動への積極的な参加。今回の勧告にいたった理由の1つがイリオモテヤマネコの存在であり、保護対策に資金面でも協力していくことを決めている。

「世界自然遺産に指定されるような場所では、ゆっくりと集客が伸びていく姿が理想です。受け入れ態勢の能力を高めながら、徐々に来島者を増やしていくことで、経済的にも自然にも持続可能性が備わりますから」。

観光そのものやリゾートを持続させるうえで宿泊客の要望に耳を傾けすぎないことも大切だと言う。

「滞在中の清掃を減らしたりペットボトルを扱わない状況を嫌がるゲストもいらっしゃいます。軽井沢や沖縄に展開している『星のや』では部屋のテレビをなくしたのですが、やはり要望の声はありました。ここは割り切るべきポイントで、充実した滞在にテレビは必要ないと決めたホテルの姿勢に賛同してくれる方に利用してもらえればいいと思っています。

西表島の場合も、まず大自然を満喫してほしいし、大切にする意義を感じてほしい。そのために最適な滞在環境を提供することが、私たちの仕事だと思っています」。

エコツーリズムには重要だとする大自然ファーストをかなえるこだわりをもって、本質的な世界基準の自然観光が日本でもスタートする。


THE BRANDO=写真 小山内 隆=編集・文

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