1年間で約8000万本──これは日本で廃棄されるビニール傘の本数である。
この膨大な数は、”使い捨て文化”が浸透していることを雄弁に物語っている。
そんな中、廃ビニール傘をリサイクルして製品化することで、環境への負担を減らそうと立ち上がったブランドがある。それが「プラスティシティ」だ。
廃ビニール傘から誕生した素材は、ほかではあまり目にしない、うっすら透けた和紙のような雰囲気。
独特の模様は、ビニールを何層にも重ねていく製作過程において、内部に微細な空気が入り込むことで生まれる。だから、一つとして同じものはなく、それぞれのアイテムは唯一無二のものとなる。
ちなみに、このように廃棄傘のビニールを粉砕したり溶かしたりして再利用せず、そのままの状態で重ねてプレスしていくという加工法は世界初。
さらに、極力環境に負荷がかからない方法を追求し、あえて“人の手によるものづくり”であることにもこだわる。
日本各地で回収した、サイズも厚さも異なるビニール傘を一枚一枚手作業で選別し、解体し、洗浄。それを重ねて圧着し、水や汚れに強いオリジナル素材“GLASS RAIN”へと再生していく。
もともとが傘であるだけに、梅雨の季節にももってこい。いや、雨だけではない。海にプールにとバカンスでも何かと重宝しそうだし、ひとつ押さえておくとヘビーユースできそう。
そんな「プラスティシティ」のアイテムは、実際によく売れているという。
売れることで廃棄される傘は減るのかもしれないが、それでも供給が足りているということは、まだまだ廃傘が溢れているという悲しい現実の裏返しでもある。
「プラスティシティ」が掲げるコンセプトは「10年後になくなるべきブランド」。廃傘の在庫ゼロになる日が来ることを祈りつつ、やがてはなくなるべきブランドとして心に留めておきたい。
[問い合わせ]プラスティシティhttps://plasticity.co.jp/都川あんり=文