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最も大切にしたのは、料理でいう出汁や下味にあたるところ。服でいうなればシルエットだ。
「フロントのイメージは、英国スーツ。誰がどう着てもきちんと見えるよう、スクエアシルエットで体型をカバーできる設計に。
肩や背中は、イタリアのスーツのようなイメージ。男は背中で語るじゃないですが、より立体的で美しく見えるように仕立てています」。
[Point1 ネック]ボディに対してやや前めに取り付け、肩の“乗りの良さ”を獲得。それにより背面のボディラインを美しく見せられるという。また、着込んでもヘタれにくいストレッチリブを採用。左の試作品では、微妙なヨレが出ていたのを修正した。
[Point2 袖丈]一般的な半袖Tシャツに比べて、やや袖丈が長めの設計に。「いいホテルやレストランにも、これ一枚で行ってもらいたい」(永原さん)。
そんな思いが詰まっており、二の腕回りの肌の露出を控える絶妙なバランスに仕上げた。
半袖と同様、白のみでロンTも展開。1万2100円/ブローダー(ブライベルガー エンタープライズ 03-6452-3649)
それを実現するために、特にこだわったのが首回りの作り。やや前傾位置にセットすることで、背中の立体感が段違いに美しくなった。
またネックの印象はドレスシャツの襟と同様に、佇まいの美しさを左右する部分。ストレッチリブの採用と縫製の技術で、洗濯を繰り返してもヘタれず常に形をキープできる仕様に仕上げた。
左と右の違いは袖のサイジングにあり。完成形は、ボディに比べサイズアップした袖に変更。試作品で作った一般的なものよりもリラックス感があり、バランスのいい見た目に。スウェットシャツとTシャツの中間的なポジションを狙った。
一方、Tシャツ作りの重要なファクターである生地については、「あまりに柔らかいと余計なドレープが出てしまい、せっかくのパターンが活きない。また目の詰まったヘビーデューティな生地では、後ろ姿の美しさが表現できない。
最終的にヘビーオンスの綿単糸を甘めに編み立てた生地を採用し、ちょうどいい見え方を表現することができました」と語る。
こうして完成した永原さん渾身の一枚は、先に手にした方々が製品化をすすめるのも納得の完成度。大人にとってエッセンシャルな服であり、愛したくなる傑作だ。
 
清水健吾=写真(人物) Taichi=写真(静物) 来田拓也、星 光彦、野上翔太=スタイリング 加瀬友重、早渕智之、大木武康=文


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