「利用」の時代に入り存在意義の確立が急がれる
今、国立公園は「利用」の時代に入った。機運の高まりは2016年に「国立公園満喫プロジェクト」が始まったことにある。
同プロジェクトは先行的に8カ所の国立公園で取り組みを始めた施策で、訪日外国人による利用者数を’20年までに1000万人へ増やすことを目指したもの。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で目標は達成できなかったが、多言語化、ビジターセンターなどへのWi-Fi導入、SNS発信、ウェブサイトの制作をはじめとした利用者受け入れのための基盤は整備された。
各公園の管理者から届く声によれば、上質なツーリズムを提供できる環境づくりは大きく進展したことがわかったという。
「それでも先日の有識者会議では、各公園の取り組みはわかったけれども、国立公園としてのブランドプロミスが見えない。日本の国立公園にはこれがあるという核を見いだし、しっかりと発信していくべきだ、という課題をいただきました」。
国立公園全体を貫くコンセプトが不足していると指摘された今、アイデンティティづくりは目下の課題。「電気自動車による利用推進やプラスチックゴミの削減など、環境施策の最先端に触れられる場所とするのが良いのではないか」といった意見交換を行いながら、日本の国立公園ならではの存在意義を早急に見いだしたいとする。
そして多くの人に「利用」し、地域にお金を落としてもらうことで、また自然が「守られる」という好循環の創出を、尾﨑さんたちは目指している。
Char=写真 小山内 隆=編集・文