現在公開中の劇場版『奥様は、取り扱い注意』に出演している俳優・西島秀俊さんにインタビュー!
西島さんが普段から大事にしているFUN-TIMEは、ごくごく身近なことだった。
久しぶりの海釣りで夢は広がる
「うーん。何ですかね、FUN-TIME……」。映画のイベントをその日の午後に控えた朝。撮影を済ませ、インタビューの企画主旨を聞き終えると、西島は冒頭の言葉を発し、黙考する。
「そう言えば去年、休日に家族で海釣りに行ったのですが、それがすごく楽しくて……と言っても、堤防で糸を垂らしていただけですけどね」。
釣果をたずねると「これくらいのカサゴが3匹(笑)」と、右手の親指と人差し指で小さく輪っかを作るようにして、いかにそのカサゴが小ぶりだったかを、おどけながら伝えてくれた。そして釣ったあとにも話の続きがある。
「家族がどうしても食べたいというので煮魚にしました。包丁で捌くほど大きくないので、ハサミで切って。もはや理科の実験みたいで……(笑)。とにかく家族が喜んでくれたので良かったです。
楽しかったので、コロナ禍が落ち着いてチャンスがあれば、まずは初心者セットを購入して再度チャレンジしたいです。いつか船に乗って大物を釣りあげるようになれたらとも思います」。
煮付けの話から、普段料理をするのかが気になり聞いてみると、ステイホーム期間中はいかに卵焼きが上手に焼けるか練習をしたとのこと。得意料理については「そういうのはないです」と、苦笑交じりに謙遜する。
その流れで、ごく日常のFUN-TIMEについて再度聞くと、「うーん、そうですねえ……」と、ここでもまた腕組みをしながら少し困ったような表情で考え込む。本人曰く、そういう時間はあるが、いつも無意識に過ごしていることが多いのでパッとは出てこないそう。
頭の中にいくつか候補が浮かんでいるのか逡巡すること数十秒。
「些細なことですが、仕事を終えて帰宅したあとに、酒やコーヒーなどを片手に、家族と何げない話をすることが意外とのんびりしているというか、ホッとしている瞬間なのかもしれないです」。
こう話した直後に「今気付いたのですが……」と前置きをしつつ、自身のFUN-TIMEについて改めて語り始めた。
「誰かと話している時間が自分にとってのFUN-TIMEかな。ひとりでいると仕事のことばかり考えてしまって心が休まらないので、仕事以外の違う世界のことを知りたいと思うんです。例えば家族が、今日どこで何をしたとか、仕事と関係ない話をすることが息抜きというか、趣味になっている気がします」。
俳優という職業は、一時的ではあるが誰かの人生を歩む仕事。そういった意味で、日常の営みを含めてあらゆる経験が糧になる。話を聞くという趣味が、仕事に与える影響は……。
「それは十分にあると思います。ただ俳優うんぬんというよりも、それ以前に人の話を聞くことが好きで。例えば仕事で何かの役を演じるのが決まったとき、いつもその職業の方に話を聞いていて。
これは役作りを言い訳に、私が話を聞きたいだけという(笑)。そこには仕事に従事する人ならではの想いやこだわりがある。俳優として演じるためにリアルな言葉が大事であるのと同じくらい、私にとって人の話を聞くということは重要なんです。
ちょっと仕事と趣味が逆転していますが……(笑)。とにかくその時間が心地良くて」。
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