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2021.04.07

からだ

アップルウォッチの心電図と血中酸素ウェルネス。医師が語るその真価

当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら
デジタルクラウンに指を当てて使う、アップルウォッチ「心電図アプリ」(DenPhotos / Shutterstock.com)
最近、次々と健康関連の機能を充実させているアップルウォッチ。昨秋発売されたシリーズ6には、肺から身体の各部分に運ばれる酸素の割合を測れる「血中酸素ウェルネス」の機能が搭載され、今年1月末には日本でも心電図アプリを使えるようになった(シリーズ4以降)。
「血中酸素ウェルネス」については、新型コロナウイルス感染症による肺炎で注目された、血中酸素飽和度を測定する医療機器「パルスオキシメーター」との関連で関心が高まっているところで、心電図アプリについては長い間日本国内で実装されていなかったことから解禁が待望されていた。
さっそくこれら二つの機能を試してみたユーザーも多いと思うが、しばらくは毎日数値を見続けていても何の変化もなく、持て余し気味だという人もまた多いのではないだろうか。
実際アップルウォッチにどのような表示があったら病院に相談すればいいだろうか。また、かかりつけの病院ではアップルウォッチのデータを受け付けてくれるだろうか。ヘルステックに詳しい国際医療福祉大学三田病院心臓血管センターの田村雄一医師と、心電図アプリの日本正式稼働にさきがけて不整脈に関する診察を行う「アップルウォッチ外来」を昨年9月に開設した、お茶の水循環器内科院長の五十嵐健祐医師に話を聞いた。

病院用の医療機器ではないアップルウォッチをどう活用するか

「血中酸素ウェルネス」は、ウェルネスという言葉が示すように、よりよい生活を送るための機能であって、医療用の機器ではない。
医療機器であるパルスオキシメーターは指先に光を通すことで動脈の血の色を調べる。赤血球の色素ヘモグロビンは酸素と結びつくと鮮やかな赤になり、酸素を放すと黒っぽくなることから、血の中にどれだけ酸素があるかがわかる。
アップルウォッチは当然手首に巻くものなので、指先に光を通すのではなく手首の血管に当てて反射させた光を調べることになる。そういう意味でパルスオキシメーターとアップルウォッチの「血中酸素ウェルネス」は全く同じものではないが、原理は同じだ。
アップルウォッチシリーズ6の裏側。LEDの光で血中酸素飽和度を測る。(A. Aleksandravicius / Shutterstock.com)
一方、「心電図アプリ」については「家庭用心電計プログラム」として医療機器の承認を受け、この度の日本解禁となった。
病院で用いる心電計とアップルウォッチの違いは何か。病院の心電計は「12誘導心電計」といって、身体にいくつも電極を貼ることによって12のベクトル(方向)から心電図を取ることができる。アップルウォッチの場合は指をデジタルクラウンに当てて測定する、いわば「単極誘導心電計」であるため、多方向からの心電図でないとわからない疾患には対応できない。
五十嵐医師によると、複数台のアップルウォッチを胸やら身体のあちこちに貼り付けて、無理矢理12誘導心電計と同等の検査を冗談として実現してしまった海外での研究も存在するそうで、そういう例は面白くはあるが、そこまでするなら病院で心電図を取った方が話は早い。
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アップルウォッチ健康機能の真価とは

五十嵐医師も田村医師も口を揃えて「医師にとって大変意義深い」と強調するのは、アップルウォッチの「血中酸素ウェルネス」にしろ「心電図アプリ」にしろ、日常生活の中で異常を監視できることによって、健康上の問題の早期発見がしやすいという特徴だ。病気は早く見つかれば見つかるほど治療しやすい。
確かに、従来であれば「何かおかしい」と症状を訴えて病院に行くか、特に自覚症状はないが健康診断を受ける、あるいはそこで異常が見つかって精密検査をするか、一度病気が落ち着いて状態をモニターするために携帯用機器で測るといったパターンしかなかった。
特に、心電図については不整脈が起きている時に取らないと異常が出ず、病院に行った時には間に合わないということもある。常にアップルウォッチを身につけていたら、動悸を感じた時に心電図アプリを作動させるだけでその瞬間の心電図を取ることができるというのはこれまでの状況に比べて大きな有用性となる。
また、「血中酸素ウェルネス」についても、肺の病気の後、常に機械をキャリーで持ち歩いて酸素補給を受けている人が本当に酸素が体中に行き渡っているかを調べるという利用法も今後の展開としては考えられる。機器の簡便さは患者の生活の質の向上にもつながってくる。
血中酸素の低下の原因は肺の病気に限らない。睡眠時無呼吸症候群の兆候を調べるという用途にもいずれはアップルウォッチが役立つ時が来るだろう。

異常があれば病院に遠慮なく行っていい

上記のようなアップルウォッチの心電図異常検出を見越して、五十嵐医師はお茶の水循環器内科に「アップルウォッチ外来」を開いているが、「症状出現時の心電図を記録したいと考えている循環器内科医は多いので、綺麗に記録が取れていれば相談を受け付けてくれるだろう」と話す。もし心配であれば「心電図アプリ」は心電図をPDF形式で出力できるので、そのデータを紙に印刷して行けばよいという。
「血中酸素ウェルネス」についてはどうだろうか。例えば、空気が薄くなる飛行機に乗るなどしてもヘモグロビンの酸素結合能力は強力で、アップルウォッチで測定した酸素飽和度はなかなか下がらない。もし下がっているとしたら、それだけ通常の生理的状態を外れていることになる。
田村医師は「酸素飽和度が90%を切っている、あるいは息切れする、苦しい、だるいなどの自覚症状があって93%以下なら呼吸器内科など病院に行った方がいい」と話す。また、そのときには心電図も同時に測定してきてほしいという。低酸素状態が起こっているとき、それは肺だけでなく、心臓の血を送り出す力が原因かもしれないからだ。
血中酸素飽和度が90%を切るようなことがあったら要注意(oasisamuel / Shutterstock.com)
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