分厚くて丸っこいフォルムのクッションをくっつけたようなフォルムが特徴的な、こちらのソファ。1971年からイタリアの家具ブランド、アルフレックス(Arflex)が発売している「マレンコ」だ。
インテリア好きの中では“名作”とも言われているので、知っている人も多いだろう。
この丸っとしたフォルムは発売当初から高く評価され、その姿は40年以上変わっていない。とはいえ、ふわふわな感触と丈夫なつくり、座り心地や耐久性の追求など、“中身”に関しては実は、100回以上の改良を重ねてきた。
つまり、常に進化をしてきた不変のソファ、なのだ。
また日本では、さまざまなブランドやアーティストとコラボしてきたことも特徴だ。例えばN.ハリウッドはオリジナルファブリックの全面にアルファベットを施したり、アーティストのミズタユウジさんとのコラボでは彼の作品をプリントするなど、個性的な見た目をキャンバスに見立てて、いろんな姿を見せてきた。
そしてこの春、宮下貴裕氏が手掛けるファッションブランド「タカヒロミヤシタザソロイスト.」とコラボしたのが、このソファなのだ。
デザインはいたってシンプルで、パッと見、もとの姿とさほど変わらないようにも思える。
しかし、これは宮下氏が愛するオリジナルのデザインへの敬意を込めて、あえてシンプルなデザインに仕上げているのだ。
ソロイストの2021年春夏コレクションでは、コロナ禍での世界的なパンデミックを受け、「すべてがリセットされた新しい世界での、男女も肌の色も関係ない“誰でもない存在”のための洋服」を創作。
そしてこのソファのシンプルなデザインも、そんな境界線が存在しない世界観を表現しているようだ。
今作ではマレンコのオリジナルファブリックはそのままに、ソロイストがデザインした「john doe(s)」「jane doe(s)」のスタンプをプラス。
これは日本語で言うところの「名無しの権兵衛」に相当する、匿名性のある名前で、先述の“誰でもない存在”の意味をより強めている。
「john doe(s)」「jane doe(s)」の両方がスタンプされた2人掛けもラインナップ。
受注生産制で、オーダーから約1カ月で届く。注文は伊勢丹店を除くタカヒロミヤシタザソロイスト.直営店、一部取り扱い店舗で受け付けている。
世界ではさまざまな境界線が図らずも顕在化している今。そんな時代にボーダーレスを表現したこのコラボソファは、ただの“ファッション”じゃない、本当のファッション好きの心にこそ、刺さるはずだ。
[問い合わせ]タカヒロミヤシタザソロイスト.アオヤマ03-6805-1989POW-DER=文