比較するのは無粋ながら、女性が思い浮かべるジュエリーと男性がリアルに身に着けるジュエリーとの間には認識に隔たりがあると思う。
あえてわかりやすく言うが、女性にとってジュエリーといえば石付きであり、婚約や結婚といった契約の象徴であり、ハレの空気を纏う特別な存在。一方の(主に我々のような)男性は、もっとカジュアルな、Tシャツやデニムにも合うアクセサリーのひとつとして捉えている。つまり同じジュエリーのはずなのに温度差がある。
では、その温度差が限りなく少ないジュエリーとは? 女性が見ても男性が見ても「ジュエリーだ」と認識できるジュエリーとは? その回答のひとつが、カルティエの新作「トリニティ」の7ロウリングだ。
「トリニティ」といえば、1924年に生まれたカルティエを象徴するジュエリーのひとつ。女性はもちろん、かの俳優ゲイリー・クーパーや詩人ジャン・コクトーなど男性たちをも魅了してきたリングである。
さてこのリングは3連ならぬ7連。新作ではあるが、実は’70年に発売されていたモデルなのだ。どこか懐かしくタイムレスな魅力を醸し出しているのは、アーカイブに刻まれた名作モデルの復刻だからであろうか。ともあれその歴史、デザイン、上質さにおいてこのリングは突出している。
シルバーのネイティブジュエリーもいい。クラフト感ある作家もののジュエリーもいい。しかしながら「男にとってのファインジュエリー」というのは、どこまでも突き詰めて納得のいく、こういうものを指すのではないだろうか。
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文