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状況を把握するなら、さりげなさが重要

つまり、若手の部下のことを把握したいのであれば、「いつもお前のことをじっと見ているぞ」みたいな強い関心をストレートに示すのではなく、さりげなく「実は知っている」ということが必要なのではないでしょうか。
ましてや、「知っていることも伝えない」ほうがいいかもしれません。「なんでこんなことも知っているの?盗聴器でもある?」などとさらに気持ち悪がられてしまう可能性さえあります。
見てないようで見ている、聞いていないようで聞いているというさりげなさが必要なのです。
さらに言えば、自分が直接見るのではなく、間接的に誰か近い人から情報を収集する方がいいかもしれません。
 

恩着せがましくないサポートをすればよいだけ

若者たちは仕事においてはまだまだ未熟でサポートを必要としています。ですから、先輩や上司は彼らに手を差し伸べてあげなければならないこともあるでしょう。そういうサポート自体はバンバンすればいいと思います。
しかし、そこで上司自身の承認欲求という邪念が出てはいけないと思うのです。例えば、「俺はこんなことまで気づいてあげているんだぜ。だからこんなサポートだって、できちゃうんだぞ。イケてる上司じゃない?」というような恩着せがましい思いを捨てましょうということです。
別に若者から尊敬されなくても、サポートできて、成功体験を積んでもらえればそれでいいではないですか。
 

「ふるさとは遠きありて思うふもの」

室生犀星の詩の一節に「ふるさとは遠きにありて思ふもの」という言葉があります。若者にとって社会人になりたてのころの上司たちはまさに「ふるさと」です。
別に彼らが今の自分をどう思っていようが取り立てて気にする必要はなく、いつか遠くに行ったとき、つまり一人前の社会人になったときに、どこかで「今の自分があるのはあの上司がああいうことをしてくれたからだ」とか「実は上司は気づかない振りをしながらも、自分のことをちゃんと見ていてくれたのだな」とか分かってくれればいいのではないかと思うのです。
そうしてまた、彼らが中高年になったときに、同じように若者をサポートしてくれるようになればいいのです。
連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ
「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
 
石井あかね=イラスト


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