時代を超えて受け継ぐ我が家
創業から1世紀が経った今、マナゴホテルは常連客にとって各自の幼少期を思い出させてくれる存在であり、初めて来た人にとっては、キンゾウとオサメの地域に尽くしたいという思いを体感できる場所だ。そしてタリンとブリトニーにとって、ホテルは我が家である。
タリンとブリトニーが受け継いだのは、コナコーヒーの木と同じくらい地域に深く根差したホテルだ。現在30代の姉妹は、幼い頃からホテルの洗濯室で遊んで、庭を駆け回って、皿洗いもやった。ブリトニーは、毎日キャンディー入れにお菓子を詰めたり、お金を数えたり、ソーダ販売機に補充したりして、祖父のハロルドから25セントの小遣いをもらったことを覚えている。
タリンは、ホテルで育った子供時代を「私たちにとっては普通のことでした」と振り返った。
ホテルに入る人は、誰であれ正面にあるキンゾウとオサメの肖像画に出迎えられる。肖像画の間に掛かっているのは、タリンとブリトニーの祖父母ハロルドとナンシーの結婚50年を記念した時計だ。祖父母はホテルの2代目経営者でもある。
真珠湾攻撃の後、自宅に戻ったハロルドは、歩道で父のキンゾウから「明日からこのホテルはお前に引き継ぐ」と告げられた。その後、ハロルドが入隊して家を離れたが、妻のナンシーがキンゾウとオサメを支えて、ホテルは営業を続けた。
ロビーの壁には、島の歴史を伝えるニュースの切り抜き記事や写真も飾られている。玄関の右側にあるガラスケースに収められているものは、キンゾウが使っていた古いカメラだ。
受付カウンターの先にはレストランがある。壁のレターボードに書かれたメニューの中で、特に有名なのがポークチョップだ。宿泊客だけでなく、地元の住民もここで食事する。子供の頃に親に連れられて来た人が、今度は自分の子供と一緒に訪れるのだ。
レストランで食事することを習慣や伝統のように捉えている人も多い。数十年前は、コーヒー豆を収穫する労働者が、1日の締めくくりに酒を飲む場所だった。今では、子供の登校前に家族で早めの朝食を楽しむ若い夫婦も見られる。
タリンとブリトニーの両親ドワイトとシェリルは、36年前にホテル経営を引き継いだ。両親が取り組んできたのは、ホテルの懐かしさを残しつつ、客がもてなしを実感できるような快適な場所にすることだった。
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