変わらないから戻るリピーター
大規模な変化を起こせば、常連客を遠ざける恐れがある。ドワイトがそう学んだのは、マナゴホテルを受け継ぐために戻ってきた1984年のことだった。オアフ島の旧カハラ・ヒルトンでバーの雑用係から経験を積み、最後はハワイ島の旧マウナ・ラニ・ベイ・ホテルで飲食部門の長まで上り詰めたドワイトは、マナゴホテルを近代化するという壮大な計画を持っていた。
たとえば、客室にテレビや電話を設置するといった案である。ところが、常連客から「そんなことをしたら、近いうちにホテルに通うのをやめるぞ」という警告を受けた。
タリンとブリトニーも、それぞれオアフ島のレストランとカリフォルニア州のホテルで働きながら業界について学んでから、マナゴホテルの経営を受け継いだ。ただし、その後姉妹が行ってきたのは、ホテル予約サイトへの掲載(予約自体は、今も紙の予約帳に手書きで記入)といった小さな改良である。
姉妹は、変化のために変えるつもりはない。それは、身の回りにあるものの多くが自分たちより長い歴史を持っているからだ。たとえば、キンゾウの肖像画の右側に立てかけられている木の柱は、ホテルの創業当時に、旅人を泊めるために使われていた和室にあったものだ。
「ここは、私の子供時代そのものです」とブリトニーは語る。「私たちはこの世界で育ちました。ここでの生き方が好きなんです。今のままでうまくいってるなら、わざわざ変える必要はないと感じています」。
「だから皆ここに戻ってくるんです。変わらないものが見られるから」とタリンも付け加える。
宿泊客は、昔も今も夕食のポークチョップを楽しみにしながら、鉢植えが並ぶ庭を歩き回ることができる。和室も1部屋あり、畳と障子と布団、そして日本式の風呂まで付いている。ハロルド・マナゴが母親のために作ったというこの和室は大人気で、チェックアウト時に来年の予約をしていく人もいるほどだ。それから、どの客室にもテレビはない。受付デスクの向かい側にテレビを見る部屋があるだけだ。
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