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思い出や想像力で広がるモノの豊かさ

スワップミートで売られているものは、必需品ではない。物語の一部分や分かち合える空想を生み出し、平凡の中で非日常と想像を味わう可能性を売っているのだ。
「ナタリー、いらないよ。ただのトランプじゃないか」 。(5ドル)
あなた、これがただのトランプですって? それなら、トランプにプリントされた、年代物のパンナム航空機やRCAのカセットデッキを見ていたら、1960年代の夢のような記憶が蘇ってこない? むしろ、もっと個人的なことで言えば、ただのトランプから、年季の入ったジョーカーを集めていた今は亡き私の親友を思いだせるのよ? いつか、彼に再会したら、ここからジョーカーを引き抜いてプレゼントしよう。
それ、ただの古ぼけた軍人の墓碑だよ。(10ドル)
スワップミートは、ありふれた日常が空想の世界になりえる場所。
ただの墓碑? つまり、暴力的な物語が生み出した、不気味な遺物、ということ? 小さな年表からは、歴史の発展が読み取れる。私たちはどのような成長過程をたどり、どの道を選ばなかっただろうか? どのような学びを選び、どの学びを切り捨てたのか? 半世紀前に誕生したクラシックロックは、そこに耳を傾ければ聞こえてくるだろうか? あるいは、想像すれば聞こえてくるだろうか?
「マウンテンアップルの木だね。いいと思う」 。(3ドル)
これは、私たちの未来の果樹園ね。将来、育った実を家族で食べる。木は日陰を作ってくれる。そして、食べ物を育てること、夏の果物の季節が授けてくれる魔法、庭の水やりの大切さを子供たちに教えてくれる。
「ナタリー、本気かい? ただのまぬけなフグの置物じゃないか」 。(2ドル)
そうね。だけど、この小ぶりでかわいらしい麦わら帽子を却下するなんて、無理よ。
 
ジョン・フック=写真 ナタリー・シャック=文 翻訳=神原里枝
This article is provided by “FLUX”. Click here for the original article.


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