気心“知れない”人たちと出会う 自然の中に身を置くこと。そこでの経験を共有すること。このセカンドハウスは、小口さんが期する目的を実現して十全に機能している。
加えて思わぬ副産物ももたらしてくれたという。それは新しい人たちとの、新しい出会いである。
「実はこの家は、月額制の多拠点生活サービスの拠点に登録されているんです。会員の方は好きなときにこの家にやってきて、思い思いに過ごしていく。それが自分にとって大きな刺激になっていますね」。
6部屋のうち1つがオーナールームで、5部屋がゲストルームとなる。この家にマッチする山小屋風のベッドがそれぞれの部屋に設置。 つまり小口さんは間違いなくオーナーであるのだが、宿泊施設の管理人でもあるというわけだ。もちろん会員はそれぞれの部屋に宿泊し、小口さんにはオーナールームがある。
とはいえリビングやダイニングは共有スペース。会員と管理人、あるいは会員同士の間には、自然な交流が生まれるのだ。
明るい陽射しが降り注ぐダイニングテーブル。この場所もまた小口さんと来客たちとの大事なコミュニケーションスペースだ。 「社会人として培ってきた人脈は何ものにも代えがたい貴重な財産です。そのおかげでフリーランスとして生きていられるわけですから。でも一方で、この年になると“気心知れた人たち”とばかり会うようになってしまうんです。
40代後半の僕が、20代のまったく新しい考えを持つ若い人たちと出会い、語り合う機会はなかなか得られません」。
家族、友人、そして新しく会う人たちと時間を共有する森の家。そこから生まれる新しいコミュニケーションは、それぞれの人生にとって豊かな時間を作り出し、多くの示唆を与えてくれることだろう。
HOUSE DATA 竣工:1988年
構造・規模:木造亜鉛メッキ銅板葺き・地上2階
敷地面積:1348㎡(約407坪)
建築面積:127.7㎡(約38坪)
設計:
川上村 、
シンカイ 間取り:日当たり抜群で風通しの良い斜面に立つ、2階建ての6LDK。1階にはキッチン、ダイニング、リビングおよび客室が2部屋。2階に客室4部屋となる。地下部分と軒下に収納スペースがある。
清水将之、山本雄生、川崎一徳=写真 加瀬友重=文