生活の拠点となり、日常を送る場=私邸の中で、空間のムードをグッと変えることができる香りと音。人間が持つ五感のなかで、嗅覚と聴覚を刺激することで、日々の生活はより充実し、活性化する。
「いい香り」と「いい音」に包まれた暮らし、それだけで何だか贅沢な気分だ。
暮らしの彩にいい香りと音って必要ですよね?
18世紀後半にパリで誕生した、ジャン=ヴァンサン・ビュリーの総合美容薬局。自然由来原料を使用し、古来の製法を継承したその香りは、ヨーロッパ中の人々を魅了してきた。
そのビュリーをオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーとして現代に蘇らせた人物が、同ブランドのオーナーであり、アーティスティックディレクターのラムダン・トゥアミだ。
今回ラムダンに、暮らしに彩を添えてくれる「いい香り」と彼の生活に欠かせない「いい音」について訊いてみた。
ワールドワイドに活躍するラムダンは、パリのリュ・デ・バック通りにある、1920年に建築されたアパートメントに私邸を構えている。
「生活する中で、ビュリーの商品はそれぞれ時間と場所によって使い分けています。朝起きてシャワーを浴びるときはソープを使い、ミルクやオイルをボディに塗ってから水性香水をつける。
車の中にはアラバストル アレクサンドリー、トイレには消臭用にマッチを置き、キャンドルの置き場所は決めていないけれど、香りは決めている。自然の香りが好きだから、ヒノキやヒバを焚くことが多いです」。
アルコールはいっさい使用せず、植物由来原料のみを使用したビュリーの製品は、人々の生活に癒やしや活性を与える極上の香りとしても知られている。
ところで、香りと向き合い時間を過ごすことが多いラムダンだが、香りと同様に空間のモードを変える音楽はどんな存在なのだろうか。
「音楽は重要どころか、人生の一部。朝は目覚めるために、夜は仕事の帰り道、自転車に乗りながら、週末は家のリビングでデザインをしながら、四六時中何かしら聴いています。これから家のインテリアを何年かぶりに変えるんだけど、音楽スタジオみたいにしようと思っていて」。
ラムダンが選んだサウンドシステムは、ドイツ出身のインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスのコレクション。
「モダンやモダニズムを形作った、先鋭的で洗練されたデザイナー。彼のすべての作品が好きで、なかでも’50〜’60年代のものにはなぜか特別なものを感じる。初めて買ったのは20年ほど前で、その時代にデザインされた作品はほぼ集めている。探し出すのはすごく大変だったけど、自宅には彼のコレクションがいっぱい」。
パリの街を一望しながら、そのレコードプレイヤーやスピーカーからはラムダン好みのサウンドが常に流れているのだろう。
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