古いけど古くない。それがクラシックの真骨頂
さて改めて付記しておくが、ポール・スチュアートの創業は1938年。アメリカのブランドとして客観的に捉えれば間違いなく老舗である。しかしながらいわゆるアメリカントラッドとは一線を画す、独特な色気が漂っている。
「コンサバティブすぎない、洗練された服なんですよね。くしくも歴代の顧客の顔ぶれが、その証しのように思えます。フランク・シナトラやケーリー・グラントといった映画スターや、アート・ブレイキーやマイルス・デイヴィスらジャズマンたち。政治家や企業人よりも文化人が目立ちます。
“自分のスタイルを出したい”人たちが、ポール・スチュアートの服を好んだのではないでしょうか」。
来る2021年春夏のテーマは“オールド・イズ・ニュー”。ブランドを代表するアイテムのひとつ「クリフォードコート」をはじめ、上品なレザーブルゾンやリネンのカーゴパンツなど、シンプルで美しいアイテムが揃っている。
「昔の服は新しい、そう言い切っています(笑)。でも実のところ、いつだって古いもののなかに新しい発見があるんです。
例えば古着店で見つけた服に斬新なテイストを感じたりすることがある。あるいは埃を払うような感覚で、サイズ感や素材を少し変えてみたら、今の気分にぴたりとハマったり。古いけど、古くならないんですよ」。
そして、合わせによってその人なりの味が出せる。それがクラシックな服の魅力なのだ。そんな服が揃う店に通い詰め、自分なりのスタイルを模索していくこと。もしかしたらそれは、とても革新的な行為なのかもしれない。
ポール・スチュアート 青山本店住所:東京都港区北青山2-14-4 the ARGYLE aoyama 1F電話番号:03-6384-5763営業:11:00〜20:00(バーは18:00〜24:00) 無休www.paulstuart.jp 鈴木泰之=写真 加瀬友重=編集・文