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以前の日本には、「分厚い靴は日本人に合わない」「薄ければ薄いほどいい」という定説が根強くありました。これまではマラソンシューズも「薄くて軽いのに反発力がある」というところがポイントで、技術的にもみんながそこを目指していました。

ナイキが「世界」を変えた

【1】「厚底への偏見」が払拭

しかし、ナイキが出した「厚底靴」を皮切りに、各メーカーから厚底シューズが出揃い、ここ数年の話題となっていた「厚底 VS.薄底論争」は終止符を打たれる形になりました。「厚底」がもう常識になったのです。
レース終盤の落ち込みを軽減する厚底ソールによるクッション性、そしてカーボンプレートによる反発性については各メーカーもわかっていたのに、これまで商品化には至りませんでした。
これまでメーカー側が厚底を提案しても指導者や選手が「マラソンのシューズは薄くなければ」という固定観念もあって受け入れられなかったからだといいます。
しかし、ナイキがエリウド・キプチョゲ選手のフルマラソン2時間切りチャレンジをまるで、NASAが月面着陸を目指したアポロ計画のように、世界中の人にストーリーとして共有することで、固定観念を鮮やかに塗り替えた。ナイキが「結果」を出したことで、「厚底への偏見」が払拭されました。これは大いに称賛されるべきことです。

【2】「どの厚底靴を選ぶのか」の時代に

先ほど紹介した、昨年の全日本大学駅伝の全8区間の区間賞のランナーのうち、全員が「ナイキのシューズ」を履いていましたが、最新モデル「アルファフライネクスト%」が6人、昨年来からのモデルである「ヴェイパーフライネクスト%」が2人と分かれました。
全日本大学駅伝で区間賞を記録した駒澤大の田澤廉選手は「アルファフライネクスト%」を履いていた(写真:EKIDEN NEWS)
つまり、必ずしも最新の「アルファフライネクスト%」一択ではなかったのです。メーカーで見れば「今年も相変わらずナイキ一色」ではあるものの、モデル別で見れば、もう少しバラけた数字になりました。
選手なら、エリウド・キプチョゲ選手(男子マラソンの世界記録保持者、特設レースで人類初のフルマラソン2時間切りを達成)や大迫傑選手が履いた最新の「アルファフライネクスト%」に手を伸ばしたくなるのは当然の心理だと思います。
東京マラソン2020で日本記録を更新した大迫傑選手(写真:EKIDEN NEWS)
ただ、履いて走った印象では「とにかく跳ねる」シューズ。うまくコントロールしないと、前ではなく、上に跳ねてしまいストライドを伸ばすのに活かせないという側面もあります。つまり「誰でも履ける代物ではない」ともいえます。選手の走り方によって「合う、合わない」はやはりあります。
つまり、「厚底靴の中でどれを選ぶか」、選手が靴を選べる時代になってきているのです。


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