一本の丸太の価値をどこまで高められるか
大手木材商社から森の学校に転職した羽田さんの仕事は、ただの「木材の営業」ではなかった。「最初は僕も木材を売るつもりで行ったんですけど」というその仕事は、山林資源の価値をもっと高めるための企画と提案だ。
「僕が考えていた林業を稼げる仕事にするための方法は、とにかく丸太をいっぱい売れるようにになることでした。木材会社ならたくさん加工することが重要だと思っていました。でも、ここに来てわかったのは、そうではなくて一本の丸太の価値をどこまで高められるかということが大事だということ。
たとえば、丸太から木材を作るときに、ホームセンターでは売ってないようないろんな端材が出るんです。これを一般のお客様向けに販売したらどうだろうと『端材マーケット』をやったら、1日400人のお客さんが来て80万円の売り上げになりました。
燃やすか処分するかの不用品だったものに価値が生まれたわけです。この会社がなんでも面白がるからできることではありますが、そういうことを考えるのが、今とても面白くって」。
羽田さんが今、森の学校で取り組んでいる事業は、イチゴ農園だ。一見、山林とは何も関係のないような事業だが、イチゴ狩りをきっかけにこの村に来た人に、DIYなどに挑戦してもらうスペースも作って、木材に親しんでもらおうというもの。
「しかもイチゴ畑の土壌には樹皮やおが粉などを使うんです。丸太の加工の過程で出る不用品をイチゴを育てるために活用しようと思っています」。
もしこの取り組みがうまくいけば、樹皮やおが粉は日本全国のいちご農家に向けた商品にもなり得る。
「自分たちが計画した事業がうまく行くかどうか、胃がキリキリすることもありますが、自分で考えて決めていけることがいい。
以前読んだんですが、神戸大学の調査によると、幸福度というのは健康であること、人間関係が良好であることに続いて、3つ目の条件は自己決定量の多さなんだそうです。西粟倉村に移住して僕が得たものは、そういうものなんだと思います」。
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