OCEANS

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──日本人に対してどのように自己責任のマインドを醸成させているのですか。

2014年の日本初開催時には、オウンリスクの意識はありませんでした。それこそトレランの延長くらいの認識でいたと思います。参加者が深夜になっても戻ってこないこともあるなど運営は大変。イベントが終わる度に、各々の反省を正直に出したレポートを参加者と共有していくことをしています。そこで、OMMのオウンリスクに対する考えを深め、そこから2~3年かけてセルフサポートのマインドを定着していきました。
現状、レースを計画するときは、リスクを考え、なるべくエスケープしやすい環境を厳選しています。参加者のレベル、体力、意識、理解がより深まれば、より厳しい環境でもできるようになっていくのですが、安全に、事故がないように運営していくことがそれ以上に重要なことなので。
 
──コースのプランニング時に配慮していることは。
我々は2チーム編成です。コースプランなど競技を担当するチームは、よりチャレンジングなコースを作ることに注力。一方、安全管理チームは、純粋にリスクマネジメントの観点から、運営エリアやコースについて判断していきます。
安全管理チームがOKと言わなければ前に進みません。非常に重要な部分です。例えば滑落のリスクや低体温症のリスクなどの度合いを客観的にみて、運営として安全にコントロールできるのかどうかを判断しています。

──11月の野沢温泉村は厳しい環境ではないでしょうか。
今年は雨や雪の予報でした。悪天候ヤッホーというカルチャーはありますね(笑)。もともとイギリスでは、10月第4週に開催。日本で言う梅雨時期のような、毎日雨の季節なんです。
また、山にはいると風が強くて厳しい。しかし、彼らはあえてその時期とその環境を選んでチャレンジしているんですね。
OMMは厳しい環境に置かれたときの精神状態をテストするといった目的もあるんです。厳しければ厳しいほど、極限の精神状態に置かれた自分が、どう対処しどのように乗り越えるのかというところがポイントです。

 

自然のなかで自分をさらけだすという醍醐味

──1組2人で参加する意味は。
2つあります。まずは、安全面。厳しい環境下ですのでケガや低体温症になる可能性があります。自分が動けなくなってしまったときのことを考え、バディの存在が必要なのです。
もう一つは、バディであること自体です。厳しい環境に置かれて、ケンカする人たちもいれば、より密な信頼関係を築く人たちもいます。自然の中で、自分をさらけ出して協力し合いフィニッシュを目指すという経験がOMMの醍醐味で、何度も参加する方々もそこに一番の魅力を感じていらっしゃることと思います。
自分の人間性を知り、相手を知ったうえでさらに自分がどう接するのか、常に判断を問われる展開の中で学んでいくことができます。走るスピードを、相手を見て配慮したり議論したりといったことが生まれます。
バディが疲れているようだけれども、ここは自分が引っ張っていく時だ、と思って必死に前を行くことも。でも、気がついたらバディがいない(笑)。その繰り返しで、自分のことだけではなく相手のことも考えながら進んでいくのは、一人でやるよりももちろん難しいです。



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