大音量に身を委ね、人混みの中で踊り、耳元に口を近づけて会話する。
密を味わう場所だったナイトクラブシーンの今について「コンタクト」のディレクター、人見太志に話を聞いた。訪れたのはこの人!
渡辺 久しぶり、でもないか(笑)。
人見 クラブではお会いしませんが、いろんな場所で遭遇しますよね。
渡辺 そうだね。どうなの? コロナ禍以降の渋谷のクラブシーンは。
人見 もちろん以前のようにはいかないし、変わるべき部分は多い。最近はコロナ禍を自分たちなりに表現できればいいなと思っていて。人との距離を示すために取り入れた床のグラフィックアート(写真)も、その一環です。
渡辺 なるほど。昔からクラブで遊んできて、今も運営としてクラブカルチャーを引っ張っている人見くんは、現状をどう捉えているんだろう?
人見 僕らの仕事は人を集めることで、集まった人には五感で何かを感じてほしい。そこは変わりません。人と人のつながりを物理的につくる。人力SNSみたいな役割ですから。
渡辺 いろんな人が来るからこそ、面白いつながりができる。僕もそれを経験して、だからこそ今があると思う。
人見 でも密をつくるわけにはいかないから、ぶっちゃけ試行錯誤の毎日ですよ。先日はDJにリモートでプレイしてもらいました。
渡辺 え! リアルタイムで?
人見 もちろん。結構面白くて、伝説のDJジャイルス・ピーターソンから「俺もやるよ!」って連絡が来たり。
渡辺 そのやり方なら海外のDJもオファーが受けやすいね。でも、なんだか混んでいたクラブが恋しいな(笑)。
人見 自分でDJする機会も増えました。最近の若い子ってCDJしか知らないんです。逆に昔からの演者さんたちは今もバイナルにこだわる。彼らの橋渡しとして、僕はどっちもやります。
渡辺 若い人もベテランも、一緒に楽しめるのがクラブのいいところだね。
人見 たまに先輩からお説教を食らうのもいい勉強だし(笑)。
渡辺 そうね、社交場だから(笑)。
人見 結局クラブカルチャーって、逆境でこそ試されるものだと思うんです。今までも何度となく規制が入って、でもそれが面白かったり、そこから何かが生まれたりして。
渡辺 押さえ付けられた反動で、すごいパワーを発揮する。だからこそ僕は、これからのクラブに期待してるんだ。
人見 本音を言えばワクチンができて、元に戻ってほしい。でも、僕たちだって負けませんよ。
——渋谷・道玄坂。日本のクラブカルチャーを支える街で夜明けの快感に打ち震える日は、きっと来る。「コンタクト」住所:東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館 B2電話番号:03-6427-8107営業:21:00〜28:00(金・土曜は22:00〜29:00) 木・日曜定休 ※イベントにより異なるinstagram@contacttokyo 若木信吾=写真 増山直樹=文