指抜きタイプのグローブを身に着ける場合は、少し注意が必要だ。この手のグローブにはどこか若者のイメージが漂うもの。
ある時期のカート・コバーン(25歳前後。『ネヴァーマインド』が出た頃である)はトレードマークのように指抜きグローブを愛用していたし、それを見たキッズたちはこぞって真似をした。
ユースカルチャーの匂いがあるからこそ、年齢なりの視点で再解釈して取り入れる。そのほうが分別ある装いになる、ということ。
理屈っぽく書いたがビジュアルで示せば簡単だ。正解はこの写真。何よりモノ自体が大人である。
上品かつ深みのあるネイビーカラー。最高級のカシミヤ素材。美しいシボ革のストラップ。装いのアクセントとして、シックな腕時計を添えるのもポイントだ。大人らしく見せるための配慮の積み重ねが、ユースなものと上手に付き合うコツなのだ。
ただ僕らは知らず知らずのうちに、そのコツを体得している可能性がある。今当たり前に身に着けているそのTシャツ、そのデニム、そのスニーカーは、もともと明らかにユースなもの。その自分らしく着こなす感覚を、ほかにも転用すればいいのだ。
僕らのファッションの幅を広げてくれたのは、実はほとんどがユースなものだったのかもしれない。
清水健吾=写真 来田拓也=スタイリング 加瀬友重=文