目指すのは海水浴場からの脱却。海水浴場は夏の風物詩であり、海が期間限定の場所であることを示すが、福島県南相馬市では北泉海浜総合公園を「日常の場所」とする試みが続く。
それは、サーフィンや、健康促進、レジャー、福利厚生、医療、教育など、1年を通して多くの人が各々の目的を持って過ごせ、存在価値を見いだせる海岸づくりを目指したもの。
プロジェクトは「南相馬市サーフツーリズム構想」と言い、福島大学の奥本英樹教授たちによる組織が、2003年に行政に提言して進めてきた「海と共生する町づくり」である。
拠点となる海岸にはキャンプ場やビーチシャワーが整備され、程なく県外からの利用者も増加。町の認知度は上がり、「北泉」の名前はサーファーたちに知られていった。途中、震災によって活動は休止したが、昨年は9年ぶりに海開きを行えた。
また海へ人が戻り始めたことで、福島独自のサーフタウンづくりはリスタートを切ったのである。
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「北泉」は海岸線の長いビーチ。良質な波が望め、しかも広いことから混雑は少なく、遠浅であるためビギナーサーファーにも優しい。震災時の津波によって、オートキャンプ場、シャワー施設などは流失したものの、シャワー施設と多目的広場は既に復旧が終了。
滑り台などの遊具も備え、海を感じながらあらゆる人が楽しい時間を過ごすことができる。その様子は、ごく自然に海を日常の場と捉える人の多いビーチカルチャー先進国に似ている。
高橋賢勇=写真 小山内 隆=編集・文