「アウトドア好き業界人のOFF着事情」とは……アーティストであり、デザイナーでもある山根さんにとって、キャンプでのひと時は欠かせない。頭をリセットするための有効な手段であり、ウェア作りにおける格好の試験場となるからだ。そんな彼が袖を通すアイテムや着こなし……うん、気になる。
久々に始めたキャンプライフで気付いたこと
3年ほどの空白期間を経て、今、再びキャンプへと目を向け始めた山根さん。今、改めてその楽しさや大切さを感じているという。
「情報をシャットアウトする。そういう環境を作れるのはキャンプのひとつの特徴だと思います。わざわざ不便さを体験しに行く行為は、人間のあるべき姿に立ち返るための行為なのかなと」。
「だから、基本的に電源サイトのあるところには泊まりません。その方が、フラットな状態でモノゴトを考えられる。で、より確信するんです。普段の生活と距離を置く行為が、自分には必要なことだなと」。
実体験に基づき辿り着いた山根流スタイル
「日本の気候は変わりやすいですから、基本的に防水性のあるものは必須」と手に取ったのは、国内屈指の寝具メーカー、ナンガと作り上げた難燃素材のダウンジャケット。その温もりはアウトドアブランドのそれと遜色はなく、着心地はいたって軽量でノーストレス。ボリューミーながらも野暮ったく見えないように作られているところがミソだ。
トップで暖かさを確保しつつ、ボトムスは動きやすさを重視。ロロピアーナ社に別注をした防水のファブリックを使用したウールのワイドトラックパンツをチョイスし、街との親和性をさりげなく意識している点は、実に山根さんらしい。さらに、「こいつはもうお決まり」というアシックスのトレッキングシューズで足元を固めれば、山根さん流キャンプスタイルの基本の“キ”が完成する。
応用編はより洗練された佇まいで
「やっぱりこういう仕事をしているので、ファッションを意識して楽しないことは大事(笑)」との言葉通り、その姿はタウンユースも可能なほどにスタイリッシュである。
アウターの襟元をすっぽり覆うハイネックが優れた防風性を担保し、ベンチレーション機能で内部の蒸れも排除。Wジップの下側を開放すれば機動力も確保できる。そのうえ、肉厚ながらもシャープなシルエットがダウンジャケットらしからぬスマートさを演じている点も見逃せない。その内側は、スウェットシャツや保温性も十分なアンダーウェアで武装している。
「自分の場合はなるべくレイヤーするのが基本。脱着しながら体温調整できるものでスタイリングしていくことの方が多いですね」。
あくまでも街で着られるものがベース。キャンプでも旅でも使える街着という認識で選んだアイテムは、まさに山根さんの真骨頂である。
ここ最近の頼もしいパートナー「ノルディスク」
アウトドアブランドに対しては最大限の敬意をもち、自身も好きで’70sや’80sのアウトドア服を収集しているという山根さん。ただ、それ以上に大好物と答えるのが、キャンプにハマるきっかけにもなったギアである。
今は、自らがコンセプトストアのオーナーを務めるデンマーク生まれのアウトドアブランド、ノルディスクのギアを特に愛用中。例えばこのテント。手にすれば、軽量さがウリとの触れ込みも大いに納得するはず。とはいえ、耐久性に優れ、インナーポケットやベンチレーションなど、細部に至る作りにも一切の妥協はない。
グッチやマルタン マルジェラがザ・ノース・フェイスとアイテムを作るなど、ここ最近、アウトドアが一層ファッションとの関係を密にしていることを日々実感するが、山根さんはその感覚をかなり昔から持っていたに違いない。
街と山の垣根を軽々と飛び越える、山根さんが作る、着るアイテムは、我々にとって最高のアイテムといえるのではないだろうか。
「アウトドア好き業界人のOFF着事情」とは……頼もしさを得て、楽しさを犠牲にするーーそんなアウトドア服はもう勘弁。じゃあ、お洒落な業界人はどんな服でアクティビティを楽しんでいるのか。見た目も機能も諦めない、アウトドア好き業界人のOFF事情。
上に戻る 菊地 亮=取材・文