36歳、妻の妊娠で人生の岐路に立つ
けれど、どんなブームも流行も、いつかは幕を引く。2010年になり、『エンタの神様』と『爆笑レッドカーペット』が相次いでレギュラー放送を終了すると、両番組に端を発するお笑いブームにも翳りが見え始めた。滝沢さんは36歳になっていた。
「『エンタの神様』や『爆笑レッドカーペット』が終わったといっても、すぐに仕事がゼロになるわけじゃないんですね。営業の数が少しずつ、でも確実に減っていく。真綿で首を絞められるような感じというか。自分でも『このままではヤバい』とわかっているくせに、気付かないふりをするんです。なんとかなるだろう、と」。
わずかばかりの貯金ももうすぐ底をつく。それを知りつつ何もできずにいたある日、現実と向き合わざるをえない出来事が起こった。妻が妊娠したのだ。
待望の子供が生まれる。喜ばしいことではあるが、まとまった額の出産費用が必要なのに加え、家族が増えると生活費もかさむ。妻に「今後は毎月22万5000円は必ず家に入れなさい」と言われた滝沢さんは、「わかりました」と即答。バイトを探し始めたものの、思わぬ壁にぶち当たることになる。
「ネックは自分の年齢でした。36歳の人間が簡単に就職することはできないって、それくらい俺でもわかりますよ。でもバイトはすぐに見つかるだろうと思ってたら、甘かった。電話で問い合わせた時点で年齢を理由に断られるんです」。
カラオケ、飲食店、ベーカリー……9社ほどに電話したが、全滅。店にとってよかれと思い、芸人の仕事との掛け持ちになることを事前に伝えたのも仇となった。
「まあ、俺が店長の立場なら、自分より年上のおっさんで、しかも定期的に休むとわかっている面倒臭いやつなんか雇いたくない。それは理解できるんだけど、36歳で気付いても手遅れだから。この事実は義務教育で教えたほうがいいですね。36になったらバイトもねーぞって(笑)」。
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