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見ない人は、「見える化」しても見えない

もし、見ようという気があれば見ることができる視界なのに、誰かに「見える化」して欲しいと考えるような人は、情報が整理されて「見える化」されても、結局は物事の本質を見ることはできません。
というのも、「見える化」とはその多くが「数値化」ですが、数値の意味を解釈するのに、実際に自分の目で見てきた経験が必要だからです。
例えば、一度も新卒採用をやったことない人が、「自社のエントリー者は1000人で、そこからの実際の応募者は600人、そこから60人の人に内定を出して、30人入社しました」と、「見える化」された各プロセスの数字をリアルタイムに把握したとして、何を感じとることができるでしょうか。有視界飛行経験のない人には、計器飛行はできないのです。
 

「見える化」を求める前に、目の前にあるもの見よ

人間には認知限界がありますので、一定の規模を越えれば自分の目で全体を把握できなくなりますので、いつかは「見える化」は必要でしょう。しかし、今がそのタイミングがどうかはきちんと考えてみるべきです。
人事の世界で言えば、タレントマネジメントと言って、社内の人事情報を一つのデータシステムに集めて、一瞬で分析を見ることができたり、それらをいろいろいじってシミュレーションしたりすることができるツールが流行っています。
しかし、目の前の自分の部下の様子を見ていないのに、ツールから吐き出されるデータだけを見ていて、何がわかるというのでしょうか。数字遊びになるだけならまだしも、数字の解釈を間違って、会社組織を変な方向にミスリードする可能性もあります。
繰り返しますが、「見える化」自体は、いつかは必要です。しかし、その前にやるべきことは既に見えているものをきちんと見るということです。
その上で、限界が来た時、「見える化」が必要なタイミングなのではないでしょうか。
 
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組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。
石井あかね=イラスト


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